ゆっくりと、大事に読み進めていた本を、ようやく読み終わりました。須賀敦子さんの「ヴェネツィアの宿」です。 その美しい文章からは、誇り高く、孤高な人物像が浮かび上がります。須賀敦子さんの作品は、これで二冊目となります。最初に読んだのは「コルシア書店の仲間たち」。 このエッセイの舞台は1960年代のイタリア、ミラノ。著者が30代の頃に、教会内の小さな書店「コルシア書店」で過ごした日々と、そこで出会った人々との交流が描かれています。 今回の「ヴェネツィアの宿」では、それよりも幅広い時代や場所を扱っています。日本の家族の話から、パリやミラノで出会った人々との回顧録まで、様々な人生の断片が丁寧に描かれて…