『七十五羽の烏』都筑道夫 「僕の先祖はものぐさ太郎」 フェアプレーを前面に押し出した快(怪)作 ペンネームの響きのせいで、僕は最初、都筑道夫を時代小説作家だと思っていた。捕物帳の名作『なめくじ長屋捕物騒ぎ』の作者だから、あながち間違いではないのだが、彼の本領は本格ミステリーにある。 社会派ミステリーの全盛期(1960年代)から倦怠期(1970年代)にかけてはかなり粗製濫造が激しかったらしく、正当な社会派ミステリーといえば松本清張の作品くらいしか見受けられない。この頃は読者も評論家も社会派ミステリーを盲目的に礼賛していたと言われていて、多くの才能ある本格ミステリー作家が不遇の境地に追いやられてい…