ゆるやかな坂道を下っていると、この感覚はひどく恋愛に似ている、と、美妃は思う。ゆるやかすぎて加速していることにも気付かない。足を取られて転ける──そうなって、初めて気付くのだ。 そしてその頃には取り返しがつかない。 自分ではどうすることも出来ない、今みたいに。 good-bye, Fairy Tale 美妃は前を歩く夏目の背中を見ている。夏目はひとつ年下の同期入社の、上司だ。 「児玉さん」 夏目が静かに振り返る。美妃ははい、と答える。 「時間少し早いから、向こう近くなったらお茶しよう」 「いいですね」 「どこか知ってる?」 「お任せします、チーフに」 美妃は静かに笑って答える。チーフ、という響…