燕子花の風景 第一話完結編 1. 皐月の季節、江戸の町は燕子花(かきつばた)の美しい花が咲き乱れ、町民たちの目を楽しませていた。 川沿いの船宿「三毛路」も、その花を楽しむ客で賑わっていた。 燕子花の青紫色の花が川面に映え、まるで絵画のような風景を作り出していた。 「ニャァ~ン、いらっしゃいませ。今日は特別な燕子花の宴をご用意しておりますニャ」 三毛路は猫なで声で客を迎えた。 八兵衛と定吉も、毎年恒例の燕子花の宴を楽しむためにこの店を訪れた。 「おう、三毛路。今日はいい天気だな。燕子花も見頃だ」 八兵衛が嬉しそうに言った。 「そうですニャ。お二人のために特等席をご用意しましたニャ」 三毛路は誇ら…