「花菫茶話」今回も、若き日の回想です。 先生のお父上のことを、私たちは「オヤジ先生」と呼んでいました。とてもダンディーで、すてきな方でした。 「花菫茶話」第四話「茶碗の一杯」 三潴正道 我が家は七人家族、四人兄弟だった。大学の教師とはいえ、父の給与はたかが知れたもの。夏休みには予備校の教師をし、日頃は授業から帰ると、汲み取った自宅の下肥を自転車で運び、近所に借りた猫の額ほどの土地を耕して家族の野菜を作っていた。 そんな事情から、私も高校に入るとバイトを始めた。 新聞配達はしんどかった。午前三時には起きて近くの駅から配達店に新聞を運ぶ。広告を挟む作業を二時間続け、その後、自転車に積んで200部ほ…