ラジオに耳を傾けながら、茶を喫み菓子を食う。のどかな正月みたいだ。 二十年も食器棚の奥に伏せられたままだった湯呑を、気まぐれに取出した。二十歳代の終いころだったろうか。同人雑誌仲間たちと笠間へ旅をした。窯場見物を愉しんだものの、小遣いの乏しい齢ごろだったから、せっかく陶器の名産地を歩いたところで、大きな買物などはできなかった。ほんのふたつみっつの雑器小物を買ったうちのひとつが、この湯呑だ。 気に入って、長く使った。実用品の貫禄とでも云おうか、掌の温もりと茶渋の作用とによって、表面の印象はずいぶん変化した。好ましい景色となった。 二十五年も経ったころ、看病や介護に明け暮れる齢ごろとなった。ゆっく…