1934年奈良県生。京都大学医学部卒、東大分院神経科、青木病院、名古屋市立大を経て、神戸大学医学部精神神経科教授。97年退官、現在神戸大学名誉教授。精神科医。精神病理学者。臨床、研究(風景構成法の考案)、翻訳など多岐にわたる功績で知られる。また、広範な知識を背景とした明晰な文章家としても著名。
主な著書
訳書
詩の翻訳
令和四年は全面中止となったのだから、数年来の習慣というには当たらない。当たらないがしかし、昨年のえんぶりがじつに愉しかったため(拙ブログ「岡目の一目~えんぶり復活(3)」参照)、仕事の都合で行けなくなったのには(予算も休みも組んでいたのに!)、ほとんど呆然とした。いくら身過ぎ世過ぎのためとはいえ余りに没義道な仕打ちではないか。 と歯噛みしかけて、いやいや長者山新羅神社の祭礼であるえんぶり、怨み言は神への非礼と思い返す。参上叶わぬならば遠く神戸で神を称え豊饒を祈ぎ奉るに如かず。すなわち、YouTubeで早速公開された動画を大音量で流しつつ、一人居間にて摺り、歌う。まるで「蘭陵王」における内田百閒…
ふつうの相談0とは、不調を「個人症候群」(中井久夫)として扱っているときに生じるものであり、疾患として診断、ラベリング、抽象化される前の原初の状態のものを言う。ふつうの相談0を持ちかける相手は、中井の言う熟知性の間柄にある人たち、つまり主に親しい友人や家族である。専門家が介入する前に、素人同士でケア/治療が行われる。医療人類学的には、クラインマンのヘルス・ケア・システムで言う民間セクターでまずは処理される。ふつうの相談0は日常の関係性の延長上で親しい人に「自然に」なされるものである。そして、家族や熟知の間柄で解決できない問題が専門職セクターや民俗セクターに持ち込まれる。 医師は、一般的な解釈で…
私の日本語雑記中井久夫岩波書店 2010年5月28日 第1刷発行 とある有志の会で、日本語がテーマだった時に話題になった。いつか読もう、、、と思っていて、だいぶたってしまったのだけれど、図書館で借りて読んでみた。 著者の中井さんは、言語学者ではない。精神医学者。1934年生れ、京都大学医学部卒業、名古屋市立大学医学部 助教授、 神戸大学医学部教授、甲南大学文学部教授。 兵庫県こころのケアセンター 初代所長。 ひょうご被害者支援センター 理事長を歴任。著書も多く、医学からエッセイ、幅広く活躍。残念ながら、昨年、2022年逝去。 これは、言葉や言語にまつわるエッセイ集。 表紙の裏の説明には、 ”精…
斎藤環が「生き延びるためのラカン」で尊敬(転移)の対象として言及していた精神科医中井久夫のエッセイ集「精神科医がものを書くとき」(ちくま学芸文庫)を長距離移動中に読み始めたら夢中になってしまった。 昨年に亡くなったことを知り、昨年末に斎藤環が監修したNHK「100分DE名著」の中井久夫スペシャルのテキストも出先で購入し、一気に読む。 感想は改めて書くが、中井はあるアメリカの学者に「どうして日本の政治家は魅力がないのか。他の国ならあれくらいの政治家ばかりだと潰れてしまう」と問われて、「日本は有名な人っていうのはたいしたことはない。無名な人が偉いので、こういう人が国を支えているのだろう」と答えたと…
彼女とは平成20年頃公募でしていた読書会で知り合った仲でした。私の感触では 13,4人いた中でとても実直な読みで印象に残っていました。その会を離れてからも私たちは年賀状のやりとりが続いておりました。 彼女は理系で家庭教師などしながら両親を看取られた様です。お1人で暮らしておられることはずっと記憶にあったのでどんな日常でおられるか今年になって電話したのです。年齢は私より10才位若く70代中ごろです。 その電話がきっかけで交流の空白時間は消えてしまいました。Eテレで放送されていた斎藤環が担当した「中井久夫スペシャル」の話をすることになってしまいました。というのは中井久夫について色々な意味で話せる相…
中井は1934年奈良県生まれ、2022年逝去、精神科医、専門は精神病理学 人類がまだ埋葬していないものの代表は戦争である。戦争を知る者が引退するか世を去った時に次の戦争が始まる例が少なくない。戦争の酸鼻な局面をほんとうに知るのは死者だけ。 戦争が「過程」であるのに対して平和は無際限に続く有為転変の「状態」である。だから、非常にわかりにくく、目にみえにくく、心に訴える力が弱い。平和は維持であるから唱え続けなければならない。 戦争における指導層の責任は単純化される。失敗が目に見えるものであっても、思いのほか責任を問われず、むしろ合理化される。指導層が要求する苦痛、欠乏、不平等は民衆が受容し忍耐する…
NHKテキスト「100分de名著」 中井久夫スペシャル 私が追跡録画をしている番組の一つ。 この番組で「中井久夫さん」を知った。 日本を代表する精神科医の方だそうです。 番組で紹介された本に興味を持ったので図書館で借りてみることにした。 いくつかの本は、「これは線を引きながら読みたい」と思ったので購入する。 買った本は下段の3冊。 特に「こんなとき私はどうしたか」はラインを引きたかったので購入。 この本は、精神科医として患者さんにどういう声かけをしたり対応をしたのか?という内容です。 現場力を上げたい人には参考になるのではないかと思います。 切羽詰まった患者さんは、何気なく言った一言に敏感にな…
写真はシロガシラ(和歌山県某所)、2023.1.22 「〝正義は制度化された商品の平等な分配という意味にまで下落している〟――こんなふうに的確なことばっていうか、いま自分が感じていて抱えている想いのカタマリが、精密に言語化されているのを読むと、何ていうか、幸せだよね。」 といったのはわたしだった、聞いていたのはいつものようにしおりさんとハジメちゃん――それは昨日のことで、わたしは自転車を無軌道に走らせながら、わたしはアタマのなかに、というより肚の底で、色々なことばや想いを反芻している、それはいつものことだが、今の仕事に就いて通勤はクルマになったから日常的に決まった時間に自転車を走らせることはな…
考え方や本の選択は自分なりに、本質を探りたいと密かに切望してきた結果でした。そしてそれは確かに大きな偏りを持った物だったと感じております。私個人の小さい日常からの疑問や苦悩から止む無くチョイスしてきたものです。やっと親としての役割が終わったことですから、その様なことを臆面もなく書いてみるのもいいかなと思ったのです。 この偏りは以前から書いていることなのですが、自分もですが、自分の家族そして親族にも発達に問題があった人がかなりおり、人知れない苦心の日々を送ったからだと感じています。 それは50年程前に自分たち家族の次女の養育に端を発した苦しみから時間と共に判明し、私達夫婦の問題として現れ、主には…
中井久夫は1934年生まれ、2022年死去。京大法学部進学後に医学部へ転籍。精神科医であり名エッセイストでもあった。専門は統合失調症の治療法研究。 解説は精神科医の斎藤環。 『「昭和」を送る』みすず書房 『戦争と平和 ある観察』人文書院 『「昭和」を送る』みすず書房 昭和天皇崩御4か月後に発表された。掲載誌は「文化会議」。単行本は2013年刊行。 架空のアメリカ人歴史家との対話という形式で語る。 昭和天皇は敵機の爆撃音にも微動だにしなかったという。大のカミナリ嫌いだったというから克己の所産だね。 生まれた時から、いかめしい老人たちが自分の前で緊張してかしこまっているという状況だね。なぜそうなの…
【中井久夫先生の精神健康の基準】(抜粋)・たくさんの自分がいて当たり前と思える・世の中の矛盾(両義性)を当たり前と思える・即座に解決を求めない、未解決のままでいられる・嫌なことは嫌と感じられる、後回しにできる・疲れを感じられる・1人でいられる、2人以上でも自分らしくいられる — utatane (@utatane1943) 2024年4月19日 ・「ま、いいか」と思える・いろいろな角度からものを見る・あの手この手を考えられる・秘密を話さないでいられる、嘘をつける・しなければならないという気持ちに対抗できる・妄想(空想)できる、独り言できる自分の精神健康をモニタリングする意味でも、定期的に読み返…
中井久夫 人と仕事 作者:最相葉月 みすず書房 Amazon 本書は、2017年から2019年にかけて、みすず書房より刊行された『中井久夫集』全11巻の解説をもとに、大幅に加筆修正をおこなったものである。中井の逝去にあたり、長年の担当編集者であった守山省吾氏より、通読することで中井久夫の生涯を浮かび上がらせることができるとして、一冊にまとめることを勧められた。 と、あとがきにおいて本書の編まれた経緯を知ってなお、どこかしらモヤモヤとしたものが残る。 一見して、なんとも捉えどころのないテキストなのである。巻末に30ページにもなる年表が付されているにしては、系統的なクロニクルをめざして書かれた形跡…
日曜日。昧爽起床。もう五時くらいから明るくなり始めている。 薄曇り。 NML で音楽を聴く。■モーツァルトの弦楽五重奏曲第三番 K.515 で、演奏はクイケン四重奏団、ヴァイオリンは寺神戸亮(NML、CD)。クイケンQ のモーツァルト、実力がありすぎて(?)めっちゃしんどい。■グリーグのヴァイオリン・ソナタ第三番 op.45 で、ヴァイオリンはオーギュスタン・デュメイ、ピアノはマリア・ジョアン・ピリス(NML、CD)。■シュトックハウゼンのピアノ曲 I~IV で、ピアノはデイヴィッド・チューダー(NML)。チューダーは「テュードア」などとも表記される、現代音楽のスペシャリストとして有名なピアニ…
曇。 図書館から借りてきた、『吉本隆明全集27(1992-1994)』を読み終える。吉本さんの全集は通読ではなく、拾い読みしているだけであるが、本書はたぶん隅々まで読んだ。本書の執筆年代はちょうどわたしが学生のときに当たっていて、ここまで来ると同時代を生きたという感覚が強く、感慨におそわれる。吉本さんのファンというのは、その書いたもののファンと、吉本さんの人柄のファンと、両方いると思うが、わたしは書き物から滲み出る人格のファンなのかも知れない。 吉本さんをあまり読んだことのない人には、大理論書もいいけれど、吉本さんの片々たる文章をお勧めしたい。吉本さんの世界はすべてがつながっており、どこを読ん…
『モデルプレス』の記事; 俳優・寺田農さん、死去 「天空の城ラピュタ」ムスカ大佐役など 3/23(土) 10:35配信 モデルプレス【モデルプレス=2024/03/23】俳優の寺田農さん*1が死去したことが分かった。享年81歳。23日、所属事務所が発表した。 ◆寺田農さん、死去所属事務所の公式サイトでは、寺田さんが14日未明に肺がんのため亡くなったと報告。生前について「最後まで仕事を続けながら、諦めることなく希望を持って、治療に励んでまいりました」と明かすとともに「桜の開花を待たずして帰らぬ人となりました」と伝えた。なお、寺田さん本人、遺族の意向により近親者のみで家族葬を執り行ったとも説明。「…
⚠️濱尾文郎 - よど号の乗客。 〔原爆空襲ピート・シーガーアメリカ共産党音楽家派非合法共産党逮捕伯爵剥奪土方与志劇団古川ロッパ甥濱尾実宮内庁侍従長官平成上皇一家担当弟→水俣病被告企業チッソ社長一家小和田雅子皇后実家隣新潟県新発田市大栄町よど号ハイジャック事件田宮高麿🇰🇵北朝鮮逃亡犯妻森順子指名手配犯森順子在日朝鮮人反日赤軍🚨〕⚠️テルアビブ空港乱射事件〔100人殺傷犯奥平剛士重信房子反日赤軍リーダー夫妻📖偶像視出版見城徹社長幻冬舎→工藤会裁判安田好弘弁護士担当名古屋アベック殺人事件山口組弘道会&足立区綾瀬女子高生コンクリ詰め殺人事件極東会極青会主犯宮野裕史改名横山父奥平剛士反日赤軍なりすまし…
この春、めぐってきた岐路。 前回2回の投稿のように、仕事自体には出会いや発見が多く――― アートを通した障害のある人たちの支援事業ということもあり、作家である利用者さんたちとの、日々の交流は言葉で表せないほどのギフトでした。 そんな職場で今年に入って露呈した問題が、私にとってなかなか相いれないものと分かりました。 この数ヶ月、気持ちが休まらず、不眠や耳のけいれんなど、自分ではコントロールできないことが起き始めました。 頭では仕事を続けられる方法を模索していたものの、自分の心身はブレーキをかけていたのかもしれません。 長い目で見れば、職場の問題も改善に向かうのかもしれない。 (利用者さんたちとの…
「子供は親の背中を見て育つ」,「子は親を映す鏡」,「子供は大人の鏡」,「子供に勝る宝なし(子に過ぎたる宝なし)」,「千の蔵より子は宝」などとも言いますが,自分の生き様(ざま)を通して,真に人間らしく実り多い(自分にとってのみならず他者や社会にとっても有益な),生きる喜びや希望に満ちた幸せな生き方の手本を示すことこそが,未来を担う子供たちに対する大人の務めなのではないでしょうか。「われのできぬことを ひとにさせるな」(中井久夫)とも言うように,たとえそれが自分の子供であったとしても,自分にできないことを他者に求めるべきではありませんし,している本人が気持ちいいだけの建前的な説教などより,本音がに…
前回の哲学カフェに参加された20代のAさんから感想をいただいたので、本人に了解を得てここでシェアします。 「テーマについてみんなで考えていくこと自体ももちろん楽しかったのですが、答えのないこと・思考を深めたところで利益につながるか分からないようなことに誠実に向き合った先に何か得るものがあるんじゃないか・よりよく生きていけるんじゃないかと信じている人(と私は感じました)がこんなにいるんだなあという点でも希望を感じて、前向きになれた貴重な時間でした涙。次回も楽しみにしています!ありがとうございました〜(^_^)」 土曜社から出ている整体対話読本というシリーズが好きでよく読んでいるのだけど、この『お…
私たちは,自分の人生に満足できていないからこそ,また,自分が進むべき道(自分が本当に信じることのできる自分なりの目標や理想)が定まっていないからこそ,他者の暮らし向きや他者の動向が気になるのであり,自分と他者を比較しては他者との勝ち負けにこだわり,他者と敵対するようになってしまうのではないでしょうか(他者に対してマウントを取ろうとするのは,自信の現れと言うよりは,むしろ,自信のなさの現れと言えるのではないでしょうか。本当に自信のある人は,他者との勝ち負けになどに余りこだわらないでしょうし,他者に対してマウントを取ることより,自分が信じる目標や理想に向かって自分が進むべき道を邁進(まいしん)する…
久々に本格的なサイコセラピー(心理療法)をなさっている方のお話をお聴きする機会がありました。 え? お前は違うのかって? そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません(^_^;) いゃあ、すごいね、とてもよい刺激になりました。 一見、淡々と繰り返されることのなかにある、大きなうねりのなかに身を置き続けていくことは、まさに中井久夫先生がおっしゃっていた「中腰で耐え凌ぐ」ということや、鷲田清一先生の「我を捨て、計らいを捨て、希望は捨てず、訪れるを待つ by 待つということ)」ということなんだよね。 クライエントの複雑怪奇でめんどうなメッセージが何を意味しているのか? 求めているものは何なのか? …
精神医療、臨床心理学にかかわる多くの関係者を取材、自ら大学院に学び、中井久夫のクライエントとなって箱庭療法や風景構成法なども経験。河合隼雄、中井久夫という臨床心理学の泰斗の活動をはじめ、カウンセリングの歴史的な発展過程や臨床心理学、精神医療の実際と課題を詳細にレポートする労作。 人間の精神、心理は、本当に複雑で、安易な一般化を許さない。だからカウンセラーは、時間をかけてクライエントに向き合う必要があり、また、経験やクライエントとの相性が重要になる。 精神科医、カウンセラーの仕事の困難、求められる覚悟の重大性がひしひしと伝わってくる。 セラピスト(新潮文庫) 作者:最相葉月 新潮社 Amazon
* トラウマという領域 戦争や災害や事件や事故といった出来事はしばし人のこころに「トラウマ」と呼ばれる深い痕跡を残します。従来、トラウマをめぐる研究は精神医学、心理学、文化人類学、当事者研究といったさまざまな学問領域において多角的な視点から行われてきましたが、1980年にアメリカ精神医学会が『精神障害の診断・統計マニュアル第3版(DSM-Ⅲ)』に追加したPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)というカテゴリーはトラウマ研究において大きな転機となりました。 PTSDの主な症状としては⑴再体験ないし侵入(外傷的な出来事がイメージ・思考・知覚の形で反復的かつ侵入的に想…
問題と目的 人を助ける、援助するという事が人間社会の中の制度となった歴史は、医療や法律といった人間社会の古くからある制度に比べ新しくまだしっかりとした構造とはいえないと考えられます。古くは、宗教がその多くを担っており、寺院や教会などの施設では、神の代わりに手当て(care)と、歓待(hospitality)をしていたと考えられます。また、法律の制度の成り立ちからは神の代りに人を裁くという、神(権威)の代行者(あるいは預言者)という構造をみることができます。 例えば、対話による援助技術のひとつであるカウンセリングでいえば、パーソンズらの職業ガイダンス運動、ピアーズの精神保健運動、知能検査の発展と…
沈丁花を入れたところまでは良かったのだが、 桃の枝を上手く入れられなかった。 蕾が可愛い。 石のお雛様と。 朝、 myrtus77.hatenablog.com 患者さんは、待ってるんです。「○○先生はもう帰られたんでしょうね。だって自動車がありませんから」と悲しい表情で聞いてきます。患者さんは、医者の乗ってる自動車のナンバーを知ってますよ。「ああ、きょうは会いに来てくれなかったんだなぁ」って夕暮れの駐車場を見ています。 会えないときは無理して会わなくていいんですよ。患者さんは気をつかいますから。医者が病気のときはみんな待ってくれますよ。「外国旅行に出る」とか「休暇に行く」と言っていいんです。…