新装版 虚無への供物(上)(下)中井英夫講談社2004年4月15日 第一刷発行この小説は、1964年に塔晶夫(とうあきお)の名前で初めて講談社から発行された。 友人が、本書が中井英夫の作品の中でも特にお薦めと言ってくれたので、図書館で借りてみた。新装版があったので、文庫本、上下でかりてみた。 『虚無への供物』は、最初は中井英夫の作品としてではなく、塔晶夫の作品として世に出た作品。69年には、中井の作品であることが明らかにされて、かつ、手直しされて再度出版された。この新装版は、2003年12月10日が中井英夫の没後10年の命日であり、2004年は『虚無への供物』が刊行されて40年という節目という…
★ 小松史生子さんが、「三島由紀夫「孔雀」にみる創造神―中井英夫「虚無への供物」との比較から―」を『三島由紀夫・短編小説2』(『三島由紀夫研究㉓』鼎書房)に寄稿されました。 ・『三島由紀夫・短編小説2』『三島由紀夫研究㉓』、鼎書房、2023年4月25日発行、146ページ・A5判並製、本体2,500円+税 ※鼎書房のHPも、ご覧下さい。 www.kanae-shobo.com 三島由紀夫・短篇小説2 (三島由紀夫研究 23) 鼎書房 Amazon
眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。 今回紹介するのは、中井英夫の『中井英夫戦中日記 彼方より 完全版』です。 中井英夫戦中日記 彼方より/中井英夫 中井英夫といえば、何といってもミステリ三大奇書のひとつ、アンチミステリ小説『虚無への供物』の作者。ほかにも、4部作からなる『とらんぷ譚』をはじめ、その耽美で美しい文体には多くのファンがいます。また、角川の短歌雑誌『短歌研究』の編集者として、寺山修司や春日井健、中城ふみ子らを発掘、塚本邦雄の再評価を行うなど、こちらの方面でも文学的な功績を残しました。…
本日も探し物をしておりました。本日は家人が外出しておりましたので、久し ぶり台所の地下に降りることにです。ここには、古いスクラップとか出版社のPR 誌などが、乱雑におかれています。 そのなかに、探している新聞の切り抜きなどがあるのではと思ったのですが、 もちろん、そんな簡単には見つからずで、これの探索は終了したのであります。 先日に深夜叢書社の代表でありました斎藤慎爾さんが亡くなられたと知人から いわれました。彼は美空ひばりさんの本を書いた人だよねと、当方に伝えてくれ たのですが、彼が購読している新聞のほうが、早くに報じていたようです。 当方は斎藤慎爾さんというと大学を卒業してから、アパートの…
蔵書は少しずつ減らしているのですが、創元ライブラリ版中井英夫全集は全巻たぶんわたしが死ぬまで持ち続け、読み続けている本だと思います。全12巻すべて初版で、発売されるのを楽しみに買っていました。読みすぎた巻はボロボロだけど。特に『虚無への供物』と『とらんぷ譚』。 昨日の夜、その『虚無への供物』のページをパラパラと繰っていて、そういえば、この本はシャンソンわりと出てくるなぁ、主要登場人物の奈々村久生は奈々緋紗緒という名でシャンソン歌手だし…と思い、SpotifyとYouTubeを駆使して聴いていました。 中井英夫の『虚無への供物』とは?から本当は始めなきゃだけれど(わからない方ポカーンですよね…)…
★ 鈴木優作さんが、「狂気の価値ーー中井英夫「幻想博物館」論ーー」を、『日本文学』2022年12月号(日本文学協会)にお書きになりました。 ・『日本文学』2022年12月号、日本文学協会、2022年12月10日発行、定価:本体1,000円+税 ・日本文学協会のHPも、ご覧ください。 http://nihonbungaku.server-shared.com/
★ 沢田安史さんが、赤江瀑・夢野久作『あやかしの鼓』を刊行されました。11月20日(日)文学フリマ東京 第一展示場 T-26 銀月亭 にて発売されます。 ・沢田安史 編 赤江瀑・夢野久作『 あやかしの鼓』、銀月亭、2022年11月20日発行、1,500円、232ページ ※書肆盛林堂のHPでも、販売されています。 seirindousyobou.cart.fc2.com ※文学フリマのブース情報も、ご覧下さい。 c.bunfree.net
陰暦六月廿五日。大暑。最低気温摂氏24.2度(水戸)。今日のお出かけは青春18きっぷで家人と二人で使ふのだが行き先は違ふが1セットのきっぷ(5回分の乗車券)を二人でなので新橋まで一緒に行き先ずは築地に向かふ家人と一旦二人で改札口を出て横浜に向かふアタシだけまた18きっぷで東海道線で横浜へ。横浜の最高気温摂氏32.8度。 猛暑のなか横浜は山手の神奈川近代文学館。5月初旬に見学した特別展「吉田健一 文學の樂しみ」は生誕110年といふ中途半端も可笑しかつたが本日の「ドナルドキーン」は生誕100年。明日までの会期といふこともあり参観者少なからず。受付横で偶然、キーン誠己さん(鶴澤浅造Ⅴ)の尊顔を拝す。…
本日の新聞夕刊にあった記事の見出しを目にして、これはあの人のことであり ますねと思いました。見出しは、「伝説の編集者 宇山日出臣 追悼の書」とな っていました。 本文の書き出しは「1944年生まれの宇山は、69年大手商社から講談社に 転職、87年親切の文芸第三部(文三)を拠点に、自ら『新本格』と名付けた ミステリーの新潮流を生み出した。定年退職の翌年の2006年、肝硬変のため 62歳で急逝した。」であります。 大手商社から講談社に69年に転職した編集者といえば、この人しかいないで ありましょうです。当方はその方の名前は失念しておりましたが、以前に話題に していたことがありました。 vzf125…
新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫) 作者:中井英夫 講談社 Amazon とても独特で型破りなスタイルの推理小説だった。 氷沼家で起こる密室の連続死に対して、登場人物たちが推理合戦を繰り広げる。全編をとおして、ひたすら互いに推理の披露。その内容には歴史風俗や植物学やシャンソンなど多岐にわたる知識が散りばめられ、とにかく情報量が濃い。次から次へ展開される圧倒的なボリュームの推理に翻弄され、もはや事件の真相なんてどうでもよくなるくらい。 どの密室事件もはっきりとは解決されないまま物語は終盤へ。どうやって落ちをつけるのかと思ったら、足元から見事にひっくり返された。鮮やか!というよりは、戸惑い…
とうとう4月になってしまう。収入も少なくなる反面出費も多くなるこの季節に、あいも変わらず古本を買っている。もちろん、その分生活はキツくなる。チビチビと古本を処分しているが、なかなか追いつくものではない。古書展もここのところ行く回数が減っているのだが、そうしたことが却って古書展以外での購入を促進してしまっているようなところがある。ここのところ購入した古書、まずはネットから。 川端康成「古都」(新潮社)昭和37年6月25日初版函帯付1601円 山田俊治「〈書くこと〉の一九世紀明治」(岩波書店)9000円 「古都」は前に買った重版は売却。こちらは初版。別に川端に興味が特段あるというのではなく、装幀に…
『魔術師 異形アンソロジー タロット・ボックスⅡ』 井上雅彦(編)/2001年/419ページ たった今、貴方は絵札を引き当てた。これは〈魔術師〉の絵札……。と、そう言って、「博士」は、長い指で、一枚を宙に翳す。アルカナ・ナンバー「Ⅰ」、これがすべての魔術の始まり……。(序章より)命すら賭して呪いをかける呪術師、巧妙なカラクリをめぐらす奇術の芸人、舞台裏から漏れる魔術師の悲哀、魔術にとらわれた人間の恐怖。魔術師を描いているのか、はたまた物語る作者が魔術師なのか……。召還されるのは、精霊なのか、恐怖なのか。気鋭のホラー・アンソロジスト、井上雅彦が贈る〈魔術師〉の物語。 (裏表紙解説文より) 芥川龍…
1/1(月) 本当のところ愛する者だけが相手を傷つけることができるのだ。 (ホルヘ・ルイス・ボルヘス『闇を讃えて』斎藤幸男訳 水声社 p8) 誤りだけがわれわれのものだ。 (p11) これらのしるしはわたしの永遠からこぼれ落ちるのだ。 (p21) われらはわれらの記憶、常ならぬ形象にあふれた空想の博物館、破れた鏡の寄せ集めにすぎない。 (p29) 代る代るに演じてきた自分をもはや覚えていないわたしは単調極まりない壁と壁とが取り巻く厭わしい道、運命を今なぞり行くのだ。 (p38) わたしはあなたが知らずに救う人々なのだ。 (p103) 1/2(火)その1 『辻邦生 全短篇1』(中公文庫 1986…
(本書のほか、『蜘蛛男』の犯人について触れています。また、横溝正史の某短編小説についても同様ですので、ご注意ください。) 昭和8年12月から翌年11月まで『キング』誌上で連載された『妖虫』(1933-34年)は、第二回目の(に、二回目!?)休筆期間を経て、江戸川乱歩が再び探偵小説文壇に戻ってきた記念すべき「第二作」である。 では、復帰第一作は?そう、もちろん『悪霊』である。 同長編は、『新青年』昭和8年11月号から華々しい宣伝文句に飾られて連載開始し、しかし、わずか三か月で敢え無く玉砕した。 そして『悪霊』といえば、そう!言わずとしれた、横溝正史による「乱歩罵倒事件」である。 「二年間の休養を…
矢吹文乃さんに「博士課程修了記念のエッセイを書きましょう」と誘われたので、私も書いてみました(嘘をついているのはどちらでしょうか^ ^)。 まったく違う曲調の「snow drop」「forbidden lover」連続リリース時のL'Arc〜en〜Cielよろしく、一日あけてアップロードしてみました。軽い気持ちで読んでください。 「また会いましょう」の引用 広島大学大学院人間社会科学研究科博士課程後期 秦 光平 私の誕生日は12月10日で、これは小説家・中井英夫の没日であり、あの『虚無への供物』(1964年)が開幕した日付でもあります(ちなみに、寺山修司の誕生日でもあったりします)。ひそかな自…
(本作品のほか、江戸川乱歩の短編小説数編について、内容に立ち入っています。) 江戸川乱歩の連載小説といえば、「陰獣」と「パノラマ島奇談」が双璧ということになるだろう。 いずれも文庫本で100頁を少し越えるくらいの長さで、現代の標準でいえば、どちらも中編小説である。しかし、乱歩自身のとらえ方では、「陰獣」は中編だが、「パノラマ島」は長編だったようだ。自身、そう書いているし、最初の平凡社から出た全集でも、後者は「長編」扱いされている[i]。これは、「陰獣」は三か月にわたって分載されたとはいえ、ひと息に書いて編集に渡したもので、乱歩にとっては書き下ろし小説であったこと。一方、「パノラマ島」は、半年以…
鏡花文学賞とは 「泉鏡花文学賞」と「泉鏡花記念金沢市民文学賞」の2つの賞からなります。 鏡花文学賞条例 第1条より 幾多の文学者を輩出した本市の文化的伝統の継承発展を図り、市民の文化水準の向上に資するため、すぐれた文芸作品に対し、鏡花文学賞を贈与するを目的とする。 泉鏡花文学賞とは 金沢市が主催する文学賞 全国規模の地方自治体主催の文学賞としては、全国に先駆けて昭和48年に制定された文学賞 昭和48年5月 泉鏡花文学賞制定趣意書より 金沢に生まれ、近代日本の文芸に偉大な貢献をなした泉鏡花の功績をたたえ、あわせて鏡花文学を育んだ金沢の風土と伝統を広く人々に認識していただき、文芸を通じ豊かな地域文…
・幻想文学 37号―特集 英国幽霊物語.幻想文学出版局,1993.・東浩紀:訂正する力(朝日新書).朝日新聞出版,2023.・木澤佐登志:闇の精神史(ハヤカワ新書).早川書房,2023.・テラス,アントワーヌ/與謝野文子゠訳:ポール・デルヴォー(シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目).河出書房新社,1974.・シャルメ,レイモン/種村季弘゠訳:クロヴィス・トロイユ(シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目).河出書房新社,1974.・中井英夫:中井英夫短歌論集(現代歌人文庫).国文社,2001.・ケレーニイ,カール/種村季弘+藤川芳朗゠訳:迷宮と神話―迷宮の研究 ある神話的観念の線反射とし…
二十歳早々、文筆家の三人の先達に出会った。俳句の加藤郁乎(いくや)、小説の中井英夫そしてドイツ文学者の種村季弘(すえひろ)の三人だ。三羽烏というか。その作品に注目した。縁があって親しくなった。《 四つで思い出したが、先日、静岡県三島市の一青年から『荒れるや』には『四運動の理論』などが出没しているのに、「念書」にフーリエの名前がはいっていないのはどういうわけかという問い合わせがあった。 》 現代詩文庫45『加藤郁乎詩集』思潮社 一九七一年十月二十日 発行 収録「自分よ、お前は…」117頁下段 加藤郁乎氏に連れられて行った新宿東口のスナック『薔薇土(ばらーど)』で飲んでいると、そこへ中井英夫氏が来…
ミステリーを中心にメモ、整理、更新 あくまで”読みたい”ということで、新刊などで気になったものあれば適宜手に取ってみようと思います。 実際読んでいくのは、ミステリー6:ビジネス系4くらい割合になると思います。 著者 タイトル 大阪圭吉 とむらい機関車 米澤穂信 満願 中井英夫 虚無への供物 笠井潔 ミネルヴァの泉は黄昏に飛びたつか? 恩田陸 中庭の出来事 泡坂妻夫 湖底のまつり 竹本健治 匣の中の失楽 夢野久作 ドグラ・マグラ 小栗虫太郎 黒死館殺人事件 早坂吝 〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 高原伸安 予告された殺人の記録 有栖川有栖 マジックミラー 有栖川有栖 双頭の悪魔 法月綸太郎 法月綸太郎…
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(本書の犯人等の内容を明かしていますので、ご注意ください。) 江戸川乱歩の『吸血鬼』(1930-31年)には、吸血鬼は出てこない。九割方読み終わった(言うまでもないが、再読)あたりで、ふと思ったのが、何でこの小説は「吸血鬼」という題名だったのだろうということであった。そう思ったとたんに、出てきました。犯人を指して「鬼だ。人外の吸血鬼だ」[i]というのだが、確かに吸血鬼は人外で、そんなことは言われずともわかるという揚げ足取りはともかく、言い方がまた乱歩らしくてうれしくなる。しかし、本書の犯人に「吸血鬼」という形容は、果たしてふさわしいだろうか[ii]。血を吸わないのは当然だが、それほどおしゃれで…
軍隊ソドミアレコード第2回は、会員制雑誌『ADONIS』に掲載のあったものを紹介。なお、『ADONIS』はゲイ雑誌で、三島由紀夫や中井英夫などが変名で小説を投稿していたことで有名。私はあまり詳しくないので、ネットなどで調べてください。 会員制ゲイ雑誌に軍隊ソドミアが載っていたのをなぜ知ったかというと、林月光目当てでさがしていた雑誌『さぶ』やホモの譜という連載が気になって集めた雑誌『桃源郷』(エドプロ)の掲載小説の元をたどったらアドニスであることを教えてもらいました。以下は、全部ではありませんが国立国会図書館や大宅文庫で複写が可能なので、興味があったら探してください。 なお、個人的感想ですが、ア…
暮れの元気なご挨拶 8ヶ月で16キロ減量成功 Billie Eilish「What was I Made for?」 ロウ・イエ「シャドウプレイ 【完全版】」 8.15「BABYMETAL APOCRYPHA - ANOTHER ONE」at Zepp Haneda Juana Molina「Un Dia」(LP) 人生2本目のギター「Epiphone Crestwood Custom Polaris White」 吉本浩二/宮崎克「ブラック・ジャック創作秘話 〜手塚治虫の仕事場から〜」 山本直樹「定本 レッド」 MUTE BEAT「Still Echo」(LP) Panda Bear & S…
今年のベスト5。 辻真先『たかが殺人じゃないか』 ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』 中井英夫『虚無への供物』 泡坂妻夫『煙の殺意』 岡真理『ガザに地下鉄が走る日』 …5番目は再読。 今年は非常に辛い年になりました。 同時にレビューを見ていると、世間の関心が哀しいかな、ようやく向き始めたところのように思います。 今も、この瞬間も、罪なく死んでいく魂のために、早く早く平和が訪れますよう。 また、宝塚のことはかなりショックでした。 劇団上層部はしっかりと原因究明をし、遺族の納得のいく結論になりますよう。