第557回 ニッポン無責任時代 平成五年八月(1993)早稲田 ACTミニシアター 一九六〇年代、小学生の私がもっとも好きなスターはクレージーキャッツの植木等だった。当時、青島幸男作詞の「スーダラ節」が大ヒットし、植木等主演の『ニッポン無責任時代』が公開された。 図々しさと調子のよさだけで、努力もせずに出世してしまうサラリーマンの夢物語は、あまりにも現実離れしているので、かえっていいのだろう。 植木等扮する平等(たいらひとし)は失業中だが、口から出まかせで洋酒会社の社長ハナ肇の氏家勇作に取り入り、社員となって接待ばかりしている。接待とは会社の金で飲み食いすること。 会社はやがて田崎潤の黒田有人…