「人生劇場」で有名な尾崎士郎が、西南戦争をテーマに「私学校蜂起」「可愛嶽突破」「桐野利秋」「波荒らし玄洋社」の4編を書いたもの。それぞれが、西南戦争の様相を丁寧に臨場感を持って描き出しています。それぞれの現場、というか現地の様子が丁寧に描かれていて、その場の情景が目に浮かんでくるよう。ここらへんは、さすが、尾崎さん、うまいなあって思いました。 桐野利秋びいきの私としては、「桐野利秋」だけで一編あるのが嬉しい。桐野利秋の生き様、死に様を描いた短編で、桐野利秋について書かれた小説としては、私は尾崎さんのこの短編が一番好きです。尾崎さんは愛知県出身で、鹿児島とはゆかりのない作家ですが、薩摩隼人の魂み…