明日の中秋の名月にちなんで、 中原中也の詩を一つ。 ☆ 月夜の浜辺 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際に、落ちていた。 それを拾って、役立てようと 僕は思ったわけでもないが なぜだかそれを捨てるに忍びず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際に、落ちていた。 それを拾って、役立てようと 僕は思ったわけでもないが 月に向ってそれはほうれず 浪に向ってそれはほうれず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、拾ったボタンは 指先に沁み、心に沁みた。 月夜の晩に、拾ったボタンは どうしてそれが、捨てられようか? ☆ 月夜の浜辺の情景と ボタンを手にした心情が しみじみと染み入ります。 …