訓読 >>> 514わが背子(せこ)が着せる衣(ころも)の針目(はりめ)落ちず入りにけらしもわが情(こころ)さへ 515ひとり寝(ね)て絶えにし紐(ひも)をゆゆしみとせむすべ知らに音(ね)のみしそ泣く 516わが持てる三(み)つあひに縒(よ)れる糸もちて付(つ)けてましもの今そ悔(くや)しき 要旨 >>> 〈514〉あなたに縫ってさしあげる着物の針目は、すっかり仕上がりました、糸といっしょに私の心も縫い込んで。 〈515〉独り寝をしていたら紐が切れて、縁起でもないと、どうしていいか分からず声を出して泣いている。 〈516〉私が持っているこの丈夫な三つ搓(よ)りの糸で付けてあげればよかったと、今…