写真家。1955年福岡県生まれ。56年より東京在住。 1979年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン科卒業。写真家・秋元茂氏に師事。1980年〜フリーランスのフォトグラファーとして、雑誌表紙および各種広告撮影を手掛ける。2000年誰もいない東京の一瞬を切り取った写真集『TOKYO NOBODY』(リトル・モア)を刊行、各メディアで大きな反響を呼んだ。『TOKYO NOBODY』で2001年度写真家協会新人賞受賞。『東京窓景』で木村伊兵衛賞受賞。 関連語 リスト::写真家
今思えば、東京の中に潜む古代性や懐かしさに対して、小説作品にまで昇華させていたのは日野啓三さんだった。 1970年代から80年代にかけて、日野さんは半蔵門近くに住み、深夜、皇居周辺を歩き回りながらコンクリートの冷え冷えとした感覚の向こうに、何かしら懐かしさを感じ取りながら、その懐かしさと呼応するように神経を研ぎ澄ませて、向こうからやってくる声に耳をすませていた。 当時の日野さんの小説は、長い海外放浪から帰ってきた私の心の深いところをとらえた。他の小説家の小説に倦んでいた私は、日野さんの小説を夢中で読み続け、神保町の古本屋で日野さんの本を片っ端から買い集めた。後に日野さんに会った時、それらをお見…
先日、中藤毅彦の新作写真集「「DOWN ON THE STREET」について文章を書いたが、彼は、2018年に「White Noise」という自らの思い入れの強さが特に反映された写真集を作っている。 この本は、彼が尊敬する写真家の川田 喜久治さんの歴史的傑作である『地図』という写真集に触発されて、この写真集を彼なりに自分の血肉として本という形にしたものだ。 川田さんの『地図』は、戦後しばらく経った頃の日本において、当時の情勢に太平洋戦争の原爆の記憶を重ねて作り上げている。 (川田 喜久治 『地図』より) 原爆という人類が経験したことのない悲劇を、記録写真として伝えるというよりは、その記憶の濃度…