ヨコカワぁ、ヨコカワぁ。機関車連結の為当駅で七分停車します。 誰もが扉から外に出る。すると首から平べったい箱を下げたオトウサン目掛けて皆殺到するのだった。中には千円札を既に握りしめているオジサンも、大きなお尻でドアをブロックして決して私の前には行かせないという、強い決意を漲させるオバサマも居ただろう。 ガチャンという衝撃はこれからの峠越えに備えて電気機関車が重連で後ろに連結されたものだった。ゴゴゴゴっと列車は動き始める。幾つものトンネルを抜ける。ぐんぐん上るとスポンと異次元に飛び出る。浅間山が噴煙を上げているそこは軽井沢だった。気の早い者はトンネルの中で食べ始めるが僕はここに来るまでいつも我慢…