叔父が久しく下高井戸に住んでいたことは、毎年、最盛期には550枚も手摺りの版画の年賀状を出していた父に、その確認・整理を手伝わされて、その度に父の知人の誰それが何処に住んでいるか見ることになっていて、そうでなくともデザイナーの叔父の年賀状はリトグラフだか何だか、父の木版とは違った版画の、オリジナル作品になっていて、特に父から見せられたから知っていたのだけれども、叔父の家に行ったことは1度しかない。 それは、叔父がその家を退去するときだった。引越の手伝いに行ったのである。 当時、私は目黒区に住んでいて、三軒茶屋から世田谷線で下高井戸まで行って、後は当時愛用していた国土地理院の1:10000地形図…