幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。 三島由紀夫の「金閣寺」はさらりと、物語の骨格を示して始まります。1956年に雑誌連載後、単行本として刊行されたこの作品は、三島に対して懐疑的だった一部の批評家たちを黙らせ、海外でも翻訳されました。 代表作の一つになり、近代日本文学の傑作に数えられています。その7年前、「仮面の告白」で実質的文壇デビューを果たした三島を、一気に日本を代表する作家の一人に押し上げたのが「金閣寺」でした。 いま読めば、そうした出来事は歴史の一コマになっています。社会状況も人の感性も違う以上、当時と同じ受け止めはできなくて当然です。同時に、やはり色褪せない魅力があるのは確か…