人麻呂挽歌 ~万葉歌から考える~ ずっと若いころに『万葉集』の講演を聴いたことがありました。その時の講師の一人に梅原猛氏がおられて、終了後に出口で自著の購入者にサインをしてあげていました。私は買っていませんが2冊あり、一方の本のサインには「真実はわたしたちの身近にある」、他方には「秘められたものの語る声は静か」と書かれていたように覚えています。その一方とは、たしか『隠された十字架』で、他方は『水底の歌』だったように思います。 『万葉集』巻二に、柿本朝臣人麻呂が赴任先の石見から上京する際に現地妻との別離を惜しんで詠まれた歌があります。 石見の海 角の浦廻(つののうらみ)を 浦なしと 人こそ見らめ…