『介護者D』を読んだ。以下は感想で、本作のネタバレを含み、引用箇所のページ数表記は書籍版のページ数を示す。 介護者D 作者:河﨑 秋子 朝日新聞出版 Amazon 主人公の琴美は、東京で派遣社員として暮らす独身の30歳女性。父親の介護のため札幌に帰る。もともと特に明確な目的があって東京にいたわけではなく、肉親からの呼び戻しに応じない強い理由もない。 元教師で昔気質な父親と同居し、介護を行う。介護に伴う動作一つ一つが、親子の間に摩擦を生む。血が繋がっているからこそ言えることもあれば、言えないこともある。そして言えないことが段々と積み重なり、それがゆっくりと子を蝕んでいく。 この時点で琴美と同年代…