今から二百年ほど前、江戸近郊の散策記録を後世に残した侍・村尾正靖(号は嘉陵、1760-1841)の紀行を辿るシリーズの第二弾。いつの間にかシリーズ化しているが、それぐらい面白い。ただ、日帰りなのに、ものすごい距離を歩くので、その足跡を実際に辿るのはなかなか大変でもあるのだが、今回はそれほど遠出はしていない。 天保二年八月八日(1831年9月13日)のことだから、嘉陵はもう数え年の七十二歳である。彼は当時住んでいた三番町の自宅(今の千代田区九段南三丁目の靖国通り沿い)から代々木八幡宮に詣でている。出かけたのは、その日の午後のことだったようだ。 村尾嘉陵の紀行はもともとは個人的な記録で、当時は刊行…