「お坊様もこれからの長旅、難儀なさいますが、 われわれがお傍にある以上ご心配はいりませんぜ。 まあ、こうした点でですな、依怙贔屓《えこひいき》と言っちゃ聞えが悪いが、 われわれもお坊様のことではあり、道中十分に気を配るつもりですがね。 そこでですな、魚心に水心のたとえもあり、遠国に流されるのですから、 土産《みやげ》ものとか食料品とかを知合の方に頼まれたら如何でしょう。 今までどなたも心よく応じてくれましたからお坊様も遠慮は無用ですよ。 お使いならわれわれ引き受けますぜ」 文覚は眼で笑いながら下役人の話を聞いていたが、 「このわしにそうした調法な知人は余りおらんな。 しかしお前たちを失望させる…