蘆江怪談集:平山蘆江 1934年(昭9)岡倉書房刊。 平山蘆江(ろこう)(1882~1953)についてはあまり語られることがない。記者作家として新聞社を転々として、演芸・花柳界の著作が多いが、歴史物、あるいは怪談物も知られている。 彼の文体は平静沈着な語り口で、まるで手を取って導かれるような快適さが感じられる。ここでは怪談話12篇に雑話1つを編んだ一冊で、埋没させておくのはもったいないと評価する筋から、近年ウェッジ文庫として再刊されていた。毎晩一話ずつ読むという楽しみにもなった。最近のホラー物とは大違いで、奇怪な事象を抑制した畏怖心をもって語るスタイルに大人の味わいがあった。「鈴鹿峠」は彼の「…