「石油を扱った作品」の第二弾は、杉森久英『アラビア太郎』(集英社文庫、1981年)です。巨大な石油メジャーに対抗し、ズブの素人であるにもかかわらず、無謀にもペルシア湾での油田開発に挑戦し、成功した最初の日本人。「アラビア石油」の創業者である山下太郎の生涯を描いた伝記小説。 [おもしろさ] 立ちふさがる大きな壁をひとつひとつ越えていく 本書の特色は、さまざまな事業に取り込んでは挫折するものの、「青年よ、大志を抱け」をモットーに、常に挑戦を繰り返した山下太郎の粘り強さと強靭な精神力を浮き彫りにした伝記小説。とりわけ、石油メジャーと対抗しながらも、資金調達→現地での交渉→開発権の獲得という、立ちふさ…