邪道も邪道だと思うけれど、わたしの耳にはイヤフォンが入っている。夏を挟んで、四ヶ月ぶりの山登り。「山登り」といってもわたしが登るのはいつもこのT山、標高六〇六メートル。いつもひとりで。たまにカズヒコと。 ソロハイクといえば聞こえはいいが、山を歩きながらわたしはポッドキャストで人のお喋りを聴いている。今日はお喋りというより、『メディアの終わりの人類史』という哲学者による講義みたいなものだ。 わたしは『水曜どうでしょう』というテレビ番組が好きだ。あの最高にくだらない、エクセルシオールに面白い番組を臨床心理士で大学の先生の著者が分析した、『結局、どうして面白いのか』という本があって、それがまた最高に…