リスト::小説家 作家、小説家。大蟻食。1962年新潟県生まれ。1991年『バルタザールの遍歴』で第3回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。 2003年『天使』で第53回平成14年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2008年『ミノタウロス』で第29回吉川英治文学新人賞を受賞。 夫=佐藤哲也(小説家)
界隈の文脈があるのでそれを知っていないと理解できない話。
祝・復刊!佐藤亜紀『ミノタウロス』 ミノタウロス (角川文庫) 作者:佐藤 亜紀 KADOKAWA Amazon 長らく品切れ状態だった佐藤亜紀『ミノタウロス』が、角川文庫から復刊された。めでたい。『スウィングしなけりゃ意味がない』が出て以来、入手困難だった佐藤亜紀の本がどんどんKADOKAWAから復刊されているのでありがたい限りである。どんどん読まれてほしい。この小説は雑誌「本の雑誌」による2007年に出た本のベスト1に選出され、また第29回吉川英治文学新人賞受賞も受賞している。私が読んだのは話題になってからずいぶん後、講談社文庫版が出た頃だったと思う。 20世紀初頭のウクライナ、内戦サバイ…
今日読んだのは、 佐藤亜紀『吸血鬼』です。 舞台は1845年のオーストリア帝国領最貧の寒村・ジェキ。 土着の風習が色濃く残る土地で、次々と人が怪死していきます。 が、ホラー小説やファンタジーなどではなく、著者の歴史に対する深い洞察に基づいた小説で、これ1冊で19世紀のポーランドの在りようが大体わかってしまいます。 ちなみに、翌年の1846年はクラクフ蜂起が起こった年で、この出来事も物語に大きく関係してきます。 しかし、色々と調べていて思ったのですが、ポーランドという国は、あらゆる国に分割され統合され、歴史にもみくちゃにされた不遇な国ですね……。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あら…
今回ご紹介するのは、佐藤亜紀『スウィングしなけりゃ意味がない』です。 ナチ政権下のハンブルクで、敵性音楽のジャズに夢中になる少年たちの危うくも輝かしい青春と、何もかもを台無しにする戦争の滑稽さと狂気。 あの狂気の時代にも、自分の感性と力をもって生きようとした若き命があったことが瑞々しく退廃的な文章と、登場するジャズのナンバーから伝わってきました。 それでは、あらすじと感想を書いていきます。 あらすじ おすすめポイント 輝かしい不良少年たち 奪うものへの憎悪 今回ご紹介した本はこちら その他のおすすめ作品 あらすじ 1940年、ナチ政権下のドイツ、ハンブルク。軍需会社経営者の父を持つブルジョワの…
今週も労働の強度が高いうえにくそ暑く、しぬ。外が逃げ場のない蒸し風呂みたいになっとる。高度に抽象的な思考は北国で発展するというから、日本列島にすむ人間もどんどん馬鹿になっていくのかもしれない。山形でしぬほど雨が降っているらしい。東海道新幹線に人たち入りで止まったりしていたし(新幹線で人たち入りってどうやるの?)、世の中の関節が外れているぜ、まったく。 通勤中に「電車通勤してるやつにクラシック音楽はわからないと豪語する許光俊『最高に贅沢なクラシック』をぱらぱらめくり、悲憤慷慨する。こいつは地獄にいく。佐藤亜紀『戦争の法』を百回読むべきね。ウィーンでオペラをみる日本人のほとんどはオペラをみているの…
筋肉痛 日曜に行ったジムでは脚トレに集中したが、これが効きすぎで朝からすごい筋肉痛。しかも、そこからさらに時間の経過とともに痛みが増している。痛いのはふくらはぎと内転筋(内腿の上の方。脚の付け根というか)。間違いなくこの部位の筋肉痛としては人生最大。どんだけトレーニング上手くいったのか、という感じ。歩くのもつらい。明日はどうなるのか・・。 仕事 仕事は久しぶりにフルメンバー。今週は皆それぞれ有休を取っているので(示し合わせたわけではないが、結果的にそうなった)、全員揃うのがむしろ珍しい。終盤で文章講座。今日のテーマは「完成はどこにあるのか」。以前にもこのブログには書いた気がするが、自分の場合文…
スカートのアンソロジー (光文社文庫) 作者:朝倉 かすみ,北大路 公子,佐藤 亜紀,佐原 ひかり,高山 羽根子,津原 泰水,中島 京子,藤野 可織,吉川 トリコ 光文社 Amazon おすすめ ★★★☆☆ 【内容紹介】わたしは、わたしの好きな作家たちに、わたしの決めたお題でもって小説を書いてもらったのだった。(中略)胸が高鳴り、読む喜びをぞんぶんに味わった。その喜びが分厚くなっていく。「スカート」というお題で、みんなで遊んでいる感じ。待って、楽しい。なにこれ。(「まえがき」より)朝倉かすみが「お願い」した九人の人気作家によるスカートモチーフの短編集。 【感想】スカートといえば、ひらひら、ふわ…
1.喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀) フランス革命前夜の18世紀ベルギー。商家で双子の姉として生まれた聡明な女性ヤネケは、当時最先端の科学に惹かれます。生命の驚異を探求するために「実験」として子供を産むみ落とすほどに狂おしい情熱は、彼女を半聖半俗の女たちが住まう「ベギン会」に移住させ、双子の弟テオの名義で科学論文を執筆する人生を選ばせます。しかしこのままならハプスブルクの緩やかな統治のもとで、皆それなりに平和な生涯を送れたはでした。隣国フランスで革命さえ起こらなければ・・。著者の既刊と同様に、困難な状況の下での希望を描いた作品です。 2.怪物(東山彰良) 大躍進政策時代の中国で撃墜された台湾空軍…
喜べ、幸いなる魂よ (角川書店単行本) 作者:佐藤 亜紀 KADOKAWA Amazon 佐藤亜紀さんの新作。 18世紀ベルギー。少年ヤンは、ある商家に引き取られた。そこの娘ヤネケはヤンを誘い、ヤンの子を産むが、まわりが止めるのを振り切ってベギン会に入ってしまう。ヤネケは自分の思うままの人生を生き、ヤンはヤネケを想い続けながらも、目まぐるしく変わる事情に振り回され、自分の人生を切り開いていく・・・。 ベギン会というものがあったそうで。尼ではなく半聖半俗という形で、独身女性たちが集まり、自分で稼いで生きていくというもの。昔の女性は、現代よりも生き方が狭められ過酷であった。そんな中に、このようなす…
そのうち日記に移して消す記事ですが。{というか後半のリストはここや日記に書くためのネタではなく、ぐだぐだし続けていっこうにアップできてない調べものの蔵出しなんですが……(cakesがお亡くなりになるまえにアップしないとなぁ)} それでは今日も、07/31開催の「オクテイヴィア・E・バトラー『血を分けた子ども』(藤井光訳)刊行記念オンライントークイベント」https://t.co/VoaIvsHlIQの宣伝がてら呟いていこうかなと思います。 — EnJoe140で短編中 (@EnJoeToh) 2022年7月19日 ここ数日、ジュディス・バトラーの著作にあたっていたのは、いわゆる生物学的性(セッ…
小説のタクティクス (単行本)作者:佐藤 亜紀筑摩書房Amazon小説の目的。それは「記述の運動によって読み手の応答を引き出すこと」だと著者は述べる。せっかく格好良く書いているところをわたしなりに無粋に噛み砕くと、書くことで、感動だったり涙だったりワクワクだったり嫉妬だったり……といった感情を引き出すということだろう。それを戦略的に、すなわちマクロ的に捉えようとしたのが『小説のストラテジー』という本で、戦術的に捉えようとしたのが本書『小説のタクティクス』となるそうだ。しかし言い回しが小難しくて全くピンと来ないなあ。
仕事に出たら咳が酷くて、あまりにも治まる気配がないので、午前中だけで早上がりにさせてもらいました。 午後に呼吸器科行ったら「吸入薬増やすか点滴するかだけど、今すぐできるから点滴しとこうか」と冷蔵庫でも買うかの如きノリで30分点滴されてきました。動けないからその間、アイッフォーンで「胎界主」の続き読んで聚楽第出陣して、ついった見たらサラムナマステ=サンのツイが腹減る時間帯に見てはいけないものでした。 腕の真ん中辺りに刺したら、針は入ったけど液が入らないとかで、もう一方で挑戦。その間必死に血管探すナース。 サラムナマステ=サンの話をして画像見せたらすげえ食いついてました。そのうちググって行くかもな…
『喜べ、幸いなる魂よ』佐藤亜紀 KADOKAWA 2022.7.12読了 初めて訪れたヨーロッパの国がベルギーだったこともあり、首都ブリュッセルの古き美しき建物の荘厳さがありありと目に浮かぶ。今でもあの感動は忘れない。この小説の舞台は、現ベルギーがある位置のフランドル地方である。時代は18世紀。表紙のイラストはブリューゲルの作品のようであたたかさがこもる。 亜麻糸商ファン・デール氏には、双子の姉弟(姉ヤネケ、弟テオ)がいる。そこに、かつての仕事上の相棒の子供、ヤンを引き取ることになる。3人の子どもたちはまるで家族のように暮らす。性生活に興味を持ったヤネクは、実験を行うようにヤンと性行為を行い子…
斉藤直子のデビュー作 2000年刊行作品。第12回の日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品。作者の斉藤直子(さいとうなおこ)は1966年生まれの小説家。本作がデビュー作となる。 ちなみにこの年はファンタジーノベル大賞の「大賞」は該当作なし。優秀賞もこれ一作とことのほか寂しい年なのであった。 単行本版の表紙は、青空を基調とした表紙イラストが美麗で思わず手に取ってみたくなる出来の良さである。 残念ながら長く文庫化されていなかったが、2018年に入ってKindle版が刊行された。しかも、書き下ろしの、前日譚作品「サンメダール教会の奇跡」が新たに書き加えられているとのこと(わたしは未読)。これは気…
忍者月影抄: 山田風太郎傑作選 忍法篇 (河出文庫) 作者:山田風太郎 河出書房新社 Amazon 怪奇幻想というのは非常に分かり易い快楽趣味である。危ないとか、きわどいとか、グロいとか、そういう趣向に乗っかった便利な快楽だ。アブない快楽を愛好する私、というナルシズムに簡単に浸れることもできる。私たち怪奇趣味者は楽な快楽に乗っかっているという自覚がなくてはいけない。では、なぜ名作といわれる怪奇幻想譚は何十年経っても読まれるのか。単に楽な快楽なだけなら直ぐ消費され尽くされ、消える。たとえば山田風太郎はどうだ。なぜ、あんなに再販を繰り返し売れるのか。現在『忍法帖』シリーズが河出文庫と角川文庫で復刊…
小針由起隆『ローマが風景になったとき 西欧近代風景画の誕生』 ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』 佐藤亜紀『小説のストラテジー』 パトリック・モディアノ『失われた時のカフェで』 ジーン・ウルフ『ナイト Ⅰ』 オスカー・ワイルド『サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇』 小針由起隆『ローマが風景になったとき 西欧近代風景画の誕生』 17世紀のローマ近郊と風景スケッチを背景に、風景画がアトリエから戸外で制作されるようになるという変化を論じた一冊。西洋美術史と風景画への興味から手に取った一冊でした。 これは大学図書館で借りた本ですが、返却期限を大…
毎週日曜日は、この一週間に書評に取り上げられた本を紹介しています。(書評の内容については各誌をご覧ください。) 今週の書評本 ◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆週刊朝日「週刊図書館」: 5/27 号 6 冊 古本食堂 原田ひ香 角川春樹事務所 1,760 ③喜べ、幸いなる魂よ 佐藤亜紀 KADOKAWA 2,090 ④名著の話 僕とカフカのひきこもり 伊集院光 KADOKAWA 1,650 ③現代思想入門 千葉雅也 講談社現代新書 990 ④妻はサバイバー 永田豊隆 朝日新聞出版 1,540 ②東大女子という生き方 秋山千…
世間で連休明けと言われる月曜日の昨日は休憩時間がほとんど取れなかったが、今日やっといつものルーティーンが戻ってくる。ルーティーンはいい。 こんな賑やかなおやつコーナーは何年ぶりになるだろうか。何も語らずとも、旅に出たことや行先などをどーだ!と見せびらかせるツールとしてのお土産がてんこ盛りだ。昼食後、コーヒーとともに博多通りもんと萩の月と阿闍梨餅(欲張ってしまった)をピックアップして数十分の読書タイム。この時間だけが楽しみで。途中しょっぱいものも欲しくなり、めんべいを追加投入。ここ数日読んでいた佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』(KADOKAWA)を読み終える。よかったー。「ベギン会」のこと初めて知…