風吹かば吹け:北条誠 1958年(昭33)1月~12月、雑誌「小説俱楽部」連載。 1958年(昭33)桃源社刊。 北条誠の得意とするメロドラマ作品の一つ。美しい人妻の「よろめき」と書けば鼻白む向きもあるだろう。老実業家社長の後妻となったヒロイン由岐子は数年前から夫が家を空けるようになり、妾宅まがいの料亭の離れで過ごしているのに悩んでいる。言わば「飼い殺し」の籠の鳥なのだが、自分の人生の空白を何かで埋める気力もない。時折ご機嫌伺いに社員が訪問するが、交代した若手の小森の心境は、当初の彼女への憐憫や同情の念から次第に愛慕へと変化していく。 風吹かば吹け:北条誠2 社長は脳梗塞で倒れても妻の看病を拒…