それは高校一年の夏休みの朝だった。 「あれ?…お父さんは?」 いつもなら腹を空かせた牛が牧草を貪り食うような勢いで朝食を食べているはずの父親の姿がない。 「なんかね…明け方に山に行くって言って…まだ帰ってこないのよ。何かあったんじゃないかと…」と心配する母親。 その時、けたたましいサイレンの音が朝の静寂を打ち破った。 ふと外を見ると、家の前の道路を何台ものパトカーが山に登って行った。 「なに?なに?お父さん…もしかして事故にあったのかも…どうしようタケシ…」 しばらくすると家の電話が鳴った。 「もしもし警察署ですが…お父さんなんですが、少しトラブルを起こしていて…今、電話代わりますので…」 「…