さて歳末だ。 二十七日だったかな、坊やのお守りかたがた、早起きして飯を炊いてた朝のことさ。東隣の園右衛門の家が、今日は餅搗きだとみえて、えらく準備にあわただしい。 搗きあがったら、隣近所へ配って歩くのが、古くから村の慣わしだ。冷えちまってはまずかろう。ほかほか湯気が立つうちに、ぜひ賞味してみてくれと、云われるに決ってる。 おらが家の飯も炊けてはいたんだが、食事の時刻を遅らせて、今か今かと待っていたんだ。が、とうとう配りに回って来なかった。その間に、おらが家で炊いた飯は、氷のごとく冷やっこく固まっちまった。 餅搗が隣へ来たといふ子哉 一茶 我門へ来さうにしたり配餅 〃 あたしぁ、村うちで冷たくあ…