2019年3月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 先日、映画を見ていてわっと涙が出てきた。子供のころから映画やドラマ、音楽などでよく泣くほうだが、年を取っても変わらない。むしろ増えた気がする。 何の変哲もない場面だった。「盆唄」というタイトルの日本のドキュメンタリー映画のDVDを自宅で見ていた。主人公は福島県の双葉町の50代後半とみられる男性で、原発事故のせいで祭ができず、消えてしまいそうな盆唄を残すため、ハワイの日系社会に伝える話だ。明治初期の移民開始からこの方、ハワイには日本移民が持ち込んだ盆踊りが残っており、福島の男性は自分たちの踊りを「疎開」させたいと考えたわけだ。…