序文・自称天皇 堀口尚次 熊沢寛道(ひろみち)〈明治22年 - 昭和41年〉は日本の皇位僭称(せんしょう)〈本人の身分を越えた地位称号を名乗ること〉者。熊沢天皇の呼称で知られる。戦前は皇位や皇族を僭称することは不敬罪として処罰対象であったが、GHQ体制下で取締りが弱くなった戦後の一時期、皇位継承者を自称する者たちが各地に出現し、世間の耳目(じもく)を集めた。熊沢はこれら「自称天皇」の代表的存在である。 熊沢の主張によれば、熊沢家は熊野宮信雅王に始まる家で、信雅王は応仁の乱の際に「西陣南帝(にしじんのなんてい)」と呼ばれた人物だとし、その父は南朝の後亀山天皇の孫とされる尊雅王〈南天皇〉であるとす…