これは、入院エピソードを誰かに話すとき、今では必ず笑いが取れる鉄板の話だ。 しかし当時の俺に、笑う余裕は一ミリもなかった。 温められた病室と、じんわりした汗 手術を終えて病棟に戻された夜、俺は意識が朦朧とする中でスマホを眺めていた。 全身麻酔のあとは体が冷えやすいらしく、ベッドは何かで温められていた。10月末、窓の外はひんやりした夜のはずなのに、病室の中だけは妙に温かい。プレートを埋め込むために10センチほど切開した右鎖骨の傷も熱を持っているのか、巡回のたびに看護師さんが測ってくれる体温は、しっかりと発熱を示していた。 じんわりと、汗をかいていた。 痛み止めの点滴が入り、パンプキンスープで胃を…