【北八】「ときに、ここらは何という所だの? ごうてきに、粋なタボ(女)がちらちらするわ…。」【弥次】「ハハア、紫ぼうしの野郎どもが見えるから、おおかた宮川町という見当だ。」 ※紫ぼうし…歌舞伎役者が用いた野郎帽子。売色の野郎などが舞台の外でも使用した。【北八】「来るぞ 来るぞ、きれいな妓(おやま)どもが来る。いいとき俺らァ着物を買ってよかった。まんざら裸のうえにその木綿合羽じゃァ、あいつらにすれ違っても、げェぶん(外聞)が悪い。」と、北八にわかに襟掻き合わせて見栄をつくりながら、向うより来るおやまげい子(野郎?)にすれ違う。すると一人のおやま振返り、北八を見て…【おやま】「はつねさん見なませ、…