葉守りの神 話が終わると、清水先生は目の前の麦茶を一気に飲み干し、ふっと息をついた。 「どうだい、石川数正は自ら裏切り者となって、家康と秀吉という偉大なふたりの仲を取り持ったというわけだ。凄い人物だとは思わないかい?」 「はい、石川数正という人物は単なる裏切り者ではないということが、先生の話でよくわかりました」 田岡も長い時間、先生の話を夢中で聞いていたので、話が終わると身体を少しほぐしながら答えた。 「田岡君、だが、この石川数正が秀吉の元へ出奔した理由は、今も歴史家たちの間では謎とされていて本当のところは分からないんだ。数正の私利私欲で裏切ったと言うのは無さそうだけれどね。 いくつか説がある…