雨となり しぐるる空の 浮き雲を いづれの方と分《わ》きてながめん 妻を亡くした源氏、妹を亡くした中将 が語り合う。 悲しみの中の中将の歌🪷 〜妹が時雨となって降る空の浮雲を どちらの方向の雲と眺め分けようか 【第9帖 葵 あおい】 「相逢相失両如夢《あひあひあひうしなふふたつながらゆめのごとし》、 為雨為雲今不知《あめとやなるくもとやなるいまはしらず》」 と口ずさみながら頬杖《ほおづえ》をついた源氏を、 女であれば先だって死んだ場合に魂は必ず離れて行くまいと 好色な心に中将を思って、 じっとながめながら近づいて来て一礼してすわった。 源氏は打ち解けた姿でいたのであるが、 客に敬意を表するため…