Observation|観察 記憶は、保存されているもののように見える。 写真、日記、録音、言葉。 あるいは、頭の中に残っている出来事。 私たちはそれらを「記憶」と呼び、 何かが過去から現在まで残っているのだと考える。 けれど、記憶はいつも、 意識的に取り出せるものとして在るわけではない。 ある道を歩いたとき。 昔と似た匂いに触れたとき。 誰かの声の調子が、過去の誰かに重なったとき。 忘れていたはずの言葉が、ふいに現在へ戻ってくるとき。 その瞬間、記憶は保存庫から取り出されるのではない。 現在の中で、もう一度立ち上がる。 記憶とは、過去そのものではなく、 過去へ戻れる入口が、現在に開く現象なの…