外から“ブーン、ブーン”と低く唸るような音が遠くから聞こえてきたら、私の気持ちはふわりと浮き立つ。 音の正体はと言えば、誰かがどこかで芝を刈っている機械音である。 これは私にとってはまさに夏がやってくるというサインそのものなのだ。 我が家の庭は南西に陣取る大木が庭に長い影を落とすものだから、まるで森の中のようにふかふかの苔が庭の芝を圧倒していている。苔に覆われた庭半分は柔らかで贅沢なカーペットのようで、それはそれで私はとても気に入っているが、でもガーデニング雑誌に掲載されている美しく刈揃えられた青青しい芝の庭から比べると哀れなほどに貧相である。 庭仕事はまた自分の年齢を自覚するバロメーターでも…