【麦の恋煩い】 生まれつき色素が薄い、と言われている。染めたわけでもないのに髪は茶色。生まれ持った瞳も薄い茶色だった。そんな私にいつの間にかつけられたあだ名が麦ちゃん。麦茶のような色だったからなのか、麦穂の色からだったのか、理由はすでに記憶の彼方だ。最初は自分も黒髪がいいなと思っていたから、あまり好んだあだ名ではなかったかもしれない。けれど今は、私はこのあだ名をまぁまぁ……そこそこ……ううん、正直に言おう、大いに気に入っている。 それは、私の好きな人が、いいな、と言って笑ってくれたからだ。いや、そう言ってくれた人だから好きになったのかもしれないのだけれど。一生懸命育っていく麦穂の美しさを、表情…