文芸評論家。1948年4月1日、山形県生まれ。 東京大学文学部仏文学科卒。国立国会図書館勤務を経て、現在明治学院大学国際学部教授。 主な著書に『アメリカの影』『日本風景論』『「天皇崩御」の図像学』『言語表現法講義』『敗戦後論』『加藤典洋の発言』『可能性としての戦後以後』『戦後的思考』『日本の無思想』』『日本人の自画像』『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』『テクストから遠く離れて』『小説の未来』などがある。
など多数。
「もうひとつのブログ」に、新しい記事をアップしました。 これは 劇的に変化する共同体と、心地よく安定した共同体で、「二重」に生きること その2/2 の続きです。 yusakumf.hatenablog.com
これは 劇的に変化する共同体と、心地よく安定した共同体で、「二重」に生きること その2/2 の続きです。 ξ 資本制社会の劇的な変化に対して、「二重の層」となり得るほどの、晴れがましさと心地よい緊張をもたらす安定がほとんど失われた20世紀末 その不安と焦燥を打ち消そうとするかのように、精神医療の世界にカウンセリング・ブームが起こりました。 心を取り扱うこと、心をコントロールすることが自分に対しても他者に対しても「万能感」をもたらす魅力が大きかったようです。*1 「心理学化」の海を離れる ξ ワタシの自己免疫疾患の闘病生活で一番困ったのは、寝たり起きたり、杖をついたりのまったく自由にならない身体…
テクストから遠く離れて (講談社文芸文庫) 作者:加藤 典洋 講談社 Amazon いまさらながら加藤典洋の『テクストから遠く離れて』を読みだす。こちらも噂、いやそれ以上におもしろい。 とかく人は、思想、文学、音楽など新しいものをありがたがるが、ほんと、それでいいのかと。なら古いのはダメなのかと述べる作者。思想や主義を紅茶キノコやタピオカなどとといっしょくたに流行扱いしていいのかと。 「テクスト論の致命的な弱点がここにある。それは、ポストモダン思想とりわけポスト構造主義の思想一般と同様、他の思想、他の批評理論の価値を否定し、これを相対化することは得意だが、自分から新しい普遍的な価値、批評原理を…
岩波書店、2019年。 書籍目次 僕の本質 Ⅰ 大きな字で書くこと 斎藤くん 大きな字で書くと 井波律子さんと桑原『論語』 森本さん 日本という国はオソロシイ 船曳くん 父 その1 父 その2 父 その3 父 その4 父 番外 多田謡子さん 橋本治という人 青山 毅 中原中也 その1 中原中也 その2 中原中也 その3 ブロックさん 寺田透先生 安岡章太郎さん はじめての座談会 カズイスチカ 久保卓也 森嶋通夫 秋野不矩さん 私のこと その1――バルバロイ 私のこと その2――東京のおばさん 私のこと その3――勇気について 私のこと その4――事故に遭う 私のこと その5――新しい要素 私の…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 不確実性の世界において、大数の法則 (試行回数が限りなく多くなると統計的に確率が算出されるものに近似する) のようにはいかない、大きな災害 (原発事故など) リスクを抱えるこの世界において、我々は何をするべきなのか、という問題提起のもと本書は進む。 著者は「近代二分論」 という案を提出する。 世俗的な言い方に直せば、「成長派 / 脱成長派」 である。 問題点として、両者は対話ができないこと…
村上春樹『海辺のカフカ』 書評 (2002)「『海辺のカフカ』は傑作か」 論文 (2003) 「『海辺のカフカ』と『換喩的な世界』」 編著 (2004) 「『海辺のカフカ』 心の闇の冥界〈リンボ〉めぐり」 新書 (2015) 「換喩と異界と『全体的な喩』」 村上春樹『海辺のカフカ』に関する主要な先行研究としては、反 (脱)=テクスト論者 である加藤典洋氏と、テクスト論者である (/であった) とされる国文学者の小森陽一氏による先行研究の二つが挙げられる。 まず、文芸評論家である加藤典洋氏による『海辺のカフカ』論には以下の四つがある。 ① 書評「『海辺のカフカ』は傑作か:村上春樹の最新長編を3氏…
読んだ本 引用元:版元ドットコム 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ なし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 『情報生命』はタイトルから分かるように、生命と情報に関する内容が詰まっている。 読み物としては面白いが、体系的な本ではないので遺伝子をめぐる論争の整理がつかない。 松岡正剛氏は『利己的な遺伝子』の構想がこれからも生きていくことを示唆したが、個人的には、人間の行動よりも言葉の始源に関心がある。 遺伝子に関する刺激的な内容であふれているが、今日はなかなか頭を悩ませた。 …
ξ ここしばらく関東は今年最高の暑さのなかにいる。 わざわざ外出してマゾ的に身体を酷暑にさらすなんてやめて エアコン効かせた室内でストレッチ、さっぱり汗をかき 昼は、いつもよりしょっぱくした、うどん、ラーメン、中華風炒め物の類を食べる。 いまはとても旨く感じる。 冬にこんなに味を濃くしたら頭が痛くなるか。 昔、北国の真夏、夜中に寒さでゲホゲホ咳きこみ、あわてて閉め忘れた窓を閉めにいった記憶がある。 いまは毎年、夜間もエアコンつけっぱなし、あの頃を夢のように思いだす。 こんな日はとにかく無理をしない、真っ昼間のビールも悪くない、パートナーや子供たちと狭っ苦しくガヤガヤ、時間つぶしをしているのがち…
ξ 黒人男性が真っ昼間、白人警官に拘束され殺害された事件を発端に、全米各都市で巻き起こった抗議活動Black Lives Matter のさなかにも、いくつも同様の事件が続いた。 これが図らずも大統領選のトランプとバイデンの明確な主張の違いにもなっている。 トランプは「法と秩序」を守っているとして警察の対応を高く評価し、この抗議活動の中で一般白人による発砲殺人が起こっても問題視することもなく、暴力的な抗議活動のほうを断固取り締まるとしている。 バイデン側は、有色人種を差別し続ける警察側の対応を改善する必要があるとしてトランプ側は分断を助長しているだけだと批判している。 ニュースを見ている限り、…
アメリカの影 (講談社文芸文庫)作者:加藤 典洋講談社Amazon 江藤淳の長編評論『成熟と喪失』(1967年刊)は、小島信夫『抱擁家族』や庄野潤三『夕べの雲』といったいわゆる第三の新人の作品を取り上げ、高度成長下における「母」(女性、自然)の崩壊とそののちにくる成熟の可能性を論じた、「戦後」という時代を考えるとき欠かすことのできない本である。加藤典洋の『アメリカの影』は江藤の問題提起を考察の出発点として書かれた3つの評論「『アメリカ』の影」「崩壊と受苦」「戦後再見」が収録されている。 加藤は「国破れて山河あり」という抒情が敗戦後の日本人を支えたことに言及し、「日本人の自己同一性というようなも…
閏月社から出版された『竹内芳郎 その思想と時代』という本に、「竹内芳郎とサルトル──裸形の倫理」という論文を書きました。 honto.jp 本日、この本の合評会シンポジウムが開かれます。 「『竹内芳郎 その思想と時代』合評会シンポジウム」2023年11月25日、於立教大学 日本サルトル学会主催永野潤、池上聡一、小林成彬、澤田直、竹本研史、北見秀司、清眞人、佐々木隆治、田崎英明参加希望の方は以下のGoogleフォームにご記入をお願い致します。https://t.co/oFWI8Bk6ln pic.twitter.com/NEyPsYuScB — 緑雨 (@ryoku28) October 21,…
2年半に渡り月1回くらいのペースで、ブログを書いてきました。ブログ記事のテーマは、文学全般、とりわけフランンス文学、芸術、建築、創作、書評、料理、旅行などで多岐に渡りますが、計30編ほどになりました。アクセス数は予想を上回り、33,000を越えました。 学生時代から私は好きな本を何度も手に取っては、メモなども作り読後感想などを書きちらしてきました。定年後も折を見ては関連する書籍に目を通し続け、新たな知見も得てきました。しかし、私は次第に自分なりに考察したことを文書にまとめてみようと思うようになりました。どうやら、私はおとなしく本から得た知識を蓄積しておくだけでは満足できない質のようです。従順な…
きのうは夜勤明け、職場の腰部レントゲンを撮りに病院へ。 ついでに健康診断で引っかかった中性脂肪の2次検査もしてもらいました。 嫌な時間を夜勤明けに耐えたので、帰りに本屋により本と手帳を買いました(自分へのご褒美)笑 毎年、この手帳を買っているのですが、来年は表紙の色が黒から変わっていて、店頭ですぐに見つけられませんでした(今年は黒だったのに)。 高橋 手帳 2024年 B6 ウィークリー フェルテ 7 モスグリーン No.237 (2023年 12月始まり) 高橋書店 Amazon あとは店頭で目についた「近代美学入門」、「大アジア」。 近代美学入門 (ちくま新書) 作者:井奥陽子 筑摩書房 …
この週末は大江健三郎と吉田秀和を再発見というか、大江に関しては新発見した。このことによって、一昨日と昨日の土日は、いつまで続く(続けられる)かは全くわからない今後の人生において大きな転換点になるかもしれないと思った。 まず大江健三郎については、彼が亡くなった今年、2023年中に1冊は読もうと思っていたが、7月下旬に小川町の三省堂書店仮店舗で買った『万延元年のフットボール』 (講談社文芸文庫1988, 単行本初出講談社1967)をようやく読了した。 bookclub.kodansha.co.jp 最初は第1章をほとんど読み進めることができず、そののちにようやくエンジンがかかってきたかと思いきや、…
池田清彦著 「本当のことを言ってはいけない」 角川新書 本当のことを言ってはいけない (角川新書) 作者:池田 清彦 KADOKAWA Amazon フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」にも出ているので、知っている人も多いかもしれない、池田清彦氏の多数ある著書の一冊。エッセイ集という感じの本ですね。(私はこの番組を知らなかったので、この本を読んでからテレビを見てみました。前列のさんまさんに一番近いところに座っている年輩の人が池田清彦氏) この本は 2020年の発行で、2018年7月~2019年9月までのメルマガ「池田清彦のやせ我慢日記」を再構成のうえ、加筆・編集したもの。コロナ前の話になるので…
金木犀をようやく見つけた。今年は開花が遅い。 昨日、池之端の「古書ほうろう」に「谷根千47号」を買いに行ったときに、先客がおられたので書棚をためつすがめつしていると、なんと「鶴見俊輔集 5 現代日本思想史」がぽつねんと刺さっていた。鶴見俊輔の全集ものが普通の古本屋に登場することはめったになくて、ほとんどは図書館に頼るしかない。ところがこの本は実に真に驚くべきことに、まさに美麗本で、おそらく一度も開かれることなくここに至っているのではないかと思われるほどであった。スピン(なんでこんな呼び名ですかね?)も外に引っ張り出されたことがなかったと思われる。だからもちろん、この種の全集には付きものの、月報…
遍 歴 『ダブリナーズ』読書会、初参戦!→村上ライブラリー講演会!!→『SPY×FAMILY』2本・『ゴールデン・カムイ』半本にて自沈!!!! 2023年10月6日(金曜日) 晴れ☀だったと思う 休み 20時から小林広直さん主催のon line読書会『Deep Dubliners』初参加。ジェイムズ・ジョイスの短篇連作『ダブリナーズ』を3年かけて読む企画。登録はしていたが金曜が休みではなかったので、聴講できていなかった。今回は第5回で第4話に当たる「Eveline」。 既読だったが、再度予習。メモを作る。詳細は「謎謎ダブリナーズ」にて。 『22 Ulysses』と違うのが、最初にブレイクアウト…
読んだ本 カント『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』光文社古典新訳文庫 (2006) 加藤典洋『僕が批評家になったわけ』岩波現代文庫 (2020) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 『実力も運のうち』を読み終えたあと、古典や歴史を読むべきだという内なる声に従い、ひとまずカントくらいは読もうと感じた。 カントも「本ばかり読んでいないで自分で考えよ」と書いている。自分のことを言われているようでドキッとしてしまった。 自分の頭で考えない人間はカント的には「未成年状態」ということになるらしい。 キケロも似たようなことを書いている。「歴史を知らな…
大江健三郎サン逝去後、ビッグコミックオリジナルのコラム欄で、この小説が触れられ、在日朝鮮人経営のスーパーに経済的に隷属した四国の小寒村の青年たちの物語、ということだったので読みました。ぜんぜんそういう話だと思っていなかったので。しかもさいごに青年たちは資本家コリアンに敗れるという展開だそうで。 万延元年のフットボール (講談社文芸文庫) 作者:大江健三郎 講談社 Amazon デザインー菊地信義 巻末に編集部作成著書目録、古林尚・文芸文庫の会による作家案内(年譜)、加藤典洋による解説、作者によるエッセー「著者から読者へ 乗り換え点として」あり。 ja.wikipedia.org 万延元年のフッ…
Ⅳ トルーマン・カポーティ――叶えられなかった祈り 第2章 その作品 第Ⅳ節 不気味なものへの誘い、あるいは恐怖の根源へ――『夜の樹』 【目次】 第Ⅳ節 不気味なものへの誘い、あるいは恐怖の根源へ――『夜の樹』... 1 1 長篇小説作家になり切れなかった、天才短篇小説作家... 3 2 「北部もの」「南部もの」... 6 3 「ミリアム」... 9 4 「夜の樹」... 11 5 「夢を売る女」... 16 6 「最後の扉を閉めて」/「最後のドアを閉めろ」... 25 6-1 「北部もの」の典型的な代表作... 25 6-2 梗概... 26 6-3 自業自得... 28 6-4 中心のない…
一条真也です。『〈怪異〉とナショナリズム』怪異怪談研究会監修、茂木謙之介/小松史生子/副田賢二/松下浩幸編著(青弓社)を読みました。カバー表紙には、「文学作品、怪談、天皇制、二・二六事件、マルクス主義と陰謀論、オカルトブーム――〈怪異〉とナショナリズムとの関係性を戦争・政治・モダニズムという3つの視点から読み解き、両者が乱反射しながら共存した近代日本の時代性を浮き彫りにする」と書かれています。 アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。「人々を政治的・社会的・文化的に統合し均質化する近代の国民国家は、非合理な他者の一つとして〈怪異〉を排除した。だが〈怪異〉はそのような近代社会と緊張関係を…
遍 歴 相方のBDでOに行く、『冷血』感想文アップして、その後遊びに行って散財 2023年8月29日(火曜日) 晴れ☀だったと思う この日は相方の××回目のBD。おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。 そんな訳で、偶々俺も休みだったので、なんとか肉を食べさせようかな、と思っていたが、なかなか企画が決まらないので、犬も歩けば棒に当たる作戦で、とりあえずOに出かける。 駅ビルでぶらぶらして、Nという古民家カフェに行く。なかなかいいぞ。 相方はクレープとアイスコーヒー、俺は梅風味の鶏の唐揚げランチ。とても美味かった。また行きたい。 O市内をぶらぶら。食器屋で皿と箸置きを買う。 海に行…
その孔からそよ風がふき出し、 木の葉も光も細かにふるえる。 戸棚の縁に貼った紙もかすかにふるえる。 「病む人の一日」(ヤニス・リッツォス 中井久夫/訳『リッツォス詩選集』) 「不確実性に耐えながら関わり続ける」というのは私には確かにとても的確に思えた言葉のはずだったし、肝心なときにはまったくきれいごとで空疎なものいいでもある。肝心なときに思うのはもっと情けないもので、ぎりぎりのものを残すくらいの、もっとも現実的な、1回きりの賭け方は何かということ。色川武大、阿佐田哲也とか、サガンとか、読んでいてよかったと思う。そちらにすがる。 隣りの建物がかなり近く、そこからいつも人の気配が聞こえてきていたの…
遍 歴 とりあえずKKが終わり、疲労の余りBOで散財 2023年8月27日(日曜日) 晴れ☀ なんか涼しくなった という訳で、還暦を前にして唐突のTSをして、かれこれ一週間経った。最初はただ見学するだけで超暇だったが、休み明け(水曜休み)の木曜日、出勤すると、社員の一人がコロナに罹患して、代理で仕事をせよ、とのこと。そもそも9時~21時の拘束で、移動に往復で4時間かかるので、大分キツカッタが、まー、なんとかやり遂げた。ガチJGはほぼ3年振りだったので、どうなることかと思ったが、幾つかの失敗もあったが、なんとかなった。 なんか節々が痛い。こりゃなんだ? 毎朝7時出発で、遅い時は帰宅が0時を越える…