1949年(昭24)8月~1950年(昭25)12月 雑誌「婦人生活」連載。 1951年 東方社刊。 終戦直後の東京の、焼跡が残り、闇市がはびこる中での人々の生活。主人公の舞台装置家岩村は身寄りのない若い女性の来訪を受け、モデルでも下女でも使ってほしいとせがまれる。彼女は有名ジャーナリストの娘だったが、戦争で一家が没落し、ならず者たちの中で暮らしていた。彼は彼女をその境遇から救い出そうとするが、妻の裏切りで彼自身の生活もすさんで行く。 文体はよくこなれていて読みやすいのと、語り口にどこか軽妙さがあって深刻にはならない。心境や感情の変化にやや飛躍が見られ、人物の行動の方向性がアンバランスに思える…