将棋棋士(故人)。1910年生まれ。戦前からプロ棋士として活躍し1949年に現役を引退。1957年から60年および1973年には日本将棋連盟会長を務め、1978年に名誉九段を贈呈される。1996年逝去。
著書『将棋は歩から』(全3巻)は将棋のなんたるかを知るための名著とされている。
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 九番勝負は「邪」です。邪!どこからこんな言葉思いつくのだろうか。 洗われて手にひえている精巣をすべて無邪気な季節のために (一郎次郎) スプーンで蛍をつぶしてゐた記憶「邪慳ぢやなか」と呟きながら (七福猫) 蜘蛛のごときバイクが好きな祖父なりき「いまはむかしの風邪(ふうじゃ)の夏じゃ」 (ぐるぐる) 洗われて手にひえている精巣をすべて無邪気な季節のために (一郎次郎) 「一郎次郎」の歌の、この「精巣」は白子みたいな感じのやつかな?魚とか動物とか、とにかく食べるために洗っ…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 五番勝負は「一郎」です。この頃、小沢一郎とオリックスのイチローが時の人であったとか…。2021年現在、小沢一郎は衆議院選挙の小選挙区で敗北し、イチローは大リーグで活躍後引退しているので隔世の感があります。 こぽこんと一郎さんが靴の砂はらっていますたぶん海ですね (一郎次郎) 政変未遂とあの日の合歓とイチローの打球の軌跡まなうらに棲む (七福猫) 洋一郎の名をつぶやけば風は何処へ 祖父の帽子からきみの帽子へ (ぐるぐる) こぽこんと一郎さんが靴の砂はらっていますたぶん海で…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 最後の10番目は「並」です。「なみ」という読み方に限定されており、「へい」も「ならぶ」もNGとのことです。 時計仕掛けの絵本をよめばすずかけの並木を抜けてまた出会う導師(グル) (加藤治郎) 民族よ 寄するおもひは冷えながら並木に生るる花のしづけさ (岡井隆) 加藤の歌は、1995年の地下鉄サリン事件を受けての「導師」なんだろうなと思いますが、全体の意味を取るのが難しい…。 なんか、どうしても「導師」に象徴される何か、現代日本のようなものを言っているのかなって連想してし…
8月17日の毎日新聞朝刊「毎日歌壇 加藤治郎・選」に掲載されました。加藤さんから評もいただいています。どうもありがとうございます。
北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 加藤治郎④ たぶんゆめのレプリカだから水滴のいっぱいついた棘草を抱く この歌すごく好きなんですが解釈できない…。すごく好きだけど分からない歌大量にあって、そういう時って語彙力が死にます…。「棘草」ってトゲトゲの痛い植物だけど、「ゆめのレプリカ」だから抱いても痛くないだろう、ってことなのかなぁ。でもなんで「ゆめ」じゃなくて「ゆめのレプリカ」なんだろう…。 そして「レプリカ」っていうと森博嗣の『夏のレプリカ』がどうしても思い浮かんでしまってそこから離れられない…。坂井修一の「タカアシガニ」並みの…
北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 加藤治郎③ よくわかる夢中になっているのがさ ひきよせてやる夜のひまわり わが岸にほそいカヌーが滑りこむしずかに水の皮膚をはがして ロマンチック短歌続きです。前回同様、なんとなくセクシーなんだけど透明感があって明るいですよね。「夜のひまわり」は首を垂れているので、おそらく彼女が自分の上に乗っていて、俯いていて髪の毛が垂れているのかなって想像しました。「ひきよせて」キスするとこなのかな。 「岸」「ほそいカヌー」「水の皮膚」は何のメタファーなんだろう。この歌は女性の作品と言われても納得してしまい…
北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 加藤治郎② 歯にあたるペコちゃんキャンデーからころとピアノの上でしようじゃないか 『短歌タイムカプセル』の時にもこの人のセックスの歌をいくつか紹介したのですが、どれも軽やかで楽しそうで明るくて好きだな。この歌とかすごい好き。この歌を題材に二次小説を書いたことあるくらい好きです(笑)。 まあ、何をするとは書いてませんが(笑)。ピアノの上でね…。Gleeのキャラはよくピアノの上に乗って歌ったり踊ったりしてたな…。 ペコちゃんキャンディーの柄を持ってくるくる回しながら、ピアノの上で何かするって言っ…
北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 加藤治郎 ぼくたちは勝手に育ったさ 制服にセメントの粉すりつけながら この人とか千葉聡の口語短歌が当時好きだったな。これとかすごい青春っぽい! ひとしきりノルウェーの樹の香りあれベッドに足を垂れて ぼくたち これは、ビートルズの”Norwegian Wood”とか村上春樹の『ノルウェイの森』となんか関係あるのかなー。同世代? しかしあの小説昔読んだときはどこがいいのか分らんかった…。もうすでにほとんど忘れてますけど、今読むと何か違うんだろうか…。でも多分読まないな…。名作という他者からの評価…
5月3日の毎日新聞朝刊「毎日歌壇 加藤治郎・選」に掲載されました。どうもありがとうございます。
講談社 穂村弘 著 「ぼくの短歌ノート」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 感謝と肯定 これはある意味「素直」とか「身も蓋もない」の系列ですね。 座るとき立ち上がるとき歩くとき ありがとう足そして重力 (東直子) すべての今にイエスを告げて水仙の葉のようなその髪のあかるさ (加藤治郎) 解説には 歌人の多くは資質的に世界を丸ごと受容する力が強く、塚本邦雄や葛原妙子といった少数の例外を除いて、それに対して異議申し立てをする感覚が稀薄だと思う。 とありました。 そうなんかなぁ。いや、もちろん私ごときが反論できるほどの材料はないのは分かってるんですけど。確かに雪舟え…
およそ子どもはどこへ連れてこられてもその土地へ精霊として根付こうとせずにいられないのだ。(「《都市》一から五まで」『続・天沢退二郎詩集』思潮社) 偶然家族 強い恋愛感情なく結婚した方が婚姻が長続きする説。恋愛感情を失ったときの落差が小さいゆえに。 為政者が現在の市民の幸せと豊かさだけを考えていたら、将来の市民は貧困に喘ぐかもしれない。徳政令がまずそうだし、一律給付金のばらまきでインフラや教育に金を回せられなければ社会が破綻する。 教員(フェミニスト)で昔同棲していた友人と会食した帰り「フェミニズムは好きだけどフェミニストは嫌いなんだよね」と言ったら 「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにな…
〈あらかたは食へる野の物敗戦日/池田崇〉な終戦記念日に毎日新聞を買った。伊藤一彦選〈突然の葬儀に結ぶネクタイを首が拒否する断固拒否する/朝岡剛〉絞首刑を連想させる。〈人見知り激しき吾娘は心地よい居場所をいまだ見つけずにいる/寶満光保〉家もダメなのだろう。うちの吾娘は人見知りはあまりないけれど場所見知りが激しい。〈その家に染みついたやうな哀しみを見ないふりして電球交換/池崎冨実夫〉と〈あと何回この人生にあるだろう 蛍光灯の切れた薄闇/竹谷友之〉は電球・蛍光灯切れでつながる。米川千嘉子選〈睡眠薬千枚通しで割る母を思ひ出しけり寝苦しき宵/三井一夫〉昔の睡眠薬だから癖がつくだろう。千枚通しのインパクト…
月曜日。晴れていてよい。梅雨明け後の早朝は温度こそ高いけれど日差しは緩やかで風も吹いており過ごしやすくなった。昼間になると湿度が上がって暑苦しくなるほうが逆に嘘みたいだ。過ごしやすいうちにベランダの植物たちの水遣りをした。夏は暑い時間帯に水遣りをすると濡れた土が高温になって植物が蒸れてしまうから、涼しい時間帯に遣るのがよいとされている。 スマホにクレカ請求額引き落とし前の通知などが来ていて、気が付けばもう月末だった。短歌の世界にこんな歌がある。 きみもきみも生きていなさい六月はエンドロールのように駆け足/加藤治郎 4月は新しい生活が始まる季節でもあって、6月というのは正念場みたいな月だと思って…
詩は世界と世界にあるすべてのものを明示すべきなのである。わたしたちにものを与えるためでなく、わたしたちからそれを奪うために。-ジャン=ポール・サルトル「マラルメ(1842−1898)」 1.夢の時代、生活の時代 自らの遅れてきた第一歌集で、あつかましくも「短歌はふたたびの夢の時代に入った。」と宣言してみせたのは平岡直子だったが、じっさいのところ、〈夢〉と向かい合って短歌を書くことのできる書き手は、ごく限られている。 そして現在、その〈夢〉とは逆に、〈生活〉は現代短歌の必須アイテムだといっていい。テン年代の短歌を語るキーワードをいくつか選ぶなら、多くの人がそのひとつとして〈生活〉をあげることにな…
山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com フラワーしげる bokutachi.hatenadiary.jp きみはよく喋る人の形 ぼくは性欲だらけの豚の皮で 説教をはじめろ牧師 この人は『短歌タイムカプセル』にも登場しましたが、相変わらず訳が分かりません。この歌なんかはなんとなく分かるような気もしないでもないけど分かっていないような気もする(笑)。 おれか、おれはおまえの存在しない弟だ、ルルとパブロンでできた獣だ 小さなものを売る仕事がしたかった彼女は小さなものを売る仕事につき、それは宝石ではなく こういうやつはなんらかの思想が感じられる…
1998年5月、立風書房から刊行された短歌アンソロジー。装幀は芦澤泰偉。 目次 ・萩原祐幸集 「萩原祐幸様」藤井貞和 ポケットエンジェル みづいろの歳月 ぼくであることの奪還 ・加藤治郎集 「キーで打ち出された純情」夏石番矢 スプーンフル コレクション ヒア・ゼア――定型の波打ち際 ・紀野恵集 「奥の手」小林恭二 天河歌 自選一〇〇首 画面の中の永遠 ・坂井修一集 「坂井修一君へ」長谷川櫂 ラセン 自選一〇〇首 出会いとその後 ・辰巳泰子集 「骨になつても笑はれてゐる」佐々木幹郎 仙川心中 自選一〇〇首 眩暈 ・林あまり集 「あまりのあまりたるゆえん」ねじめ正一 椿姫の首 自選一〇〇首 幸福な…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 9番目は「風」です。風邪、風景、風貌、風靡などでもいい、と書いてあるので、おそらく「風」という漢字を使うというルールかと思われます。 マルクスはかつて万能 おおどかにユーラシア吹く風に運ばれ (道浦母都子) 溺れたひとという想定の人形のあたまを抱く熱風のなか (穂村弘) 道浦の歌は、意味を取るのはそれほど難しくないように思います。(今は廃れたが)マルクス主義はかつては万能と信じられた思想であった、ユーラシア大陸を風に運ばれて(タンポポの綿毛のように)おおらかに広がってい…
山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 山田富士郎 bokutachi.hatenadiary.jp 悪意はもう時代遅れだ花柄の透明の傘街にふはふは 悪意はもう時代遅れ。これはいつの時代の歌なんだろう、と思って解説を見てみると、1987年「アビー・ロードを夢みて」で第33回角川短歌賞、1991年第1歌集「アビー・ロードを夢みて」で第35回現代歌人協会賞、とあるので、80年代後半のようです。バブルの頃なのかな。それにしても、悪意が時代遅れになる時ってくるのだろうか。 ビートルズつて何なんだらうきよらかな朝のひかりに不意の欲情 今日午後のぼ…
山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。 yuifall.hatenablog.com 西勝洋一 bokutachi.hatenadiary.jp 自らをつねに〈未完〉とおもうべし澄みし水辺のわがナルキソス 冒頭にこの歌が引用されるので、耽美、青春、前衛、とかそういう系統なのかなぁ、と思いながら読み進めました。 廃園に少女ともない夏逝くと見ている誰も知らない街を のように、「少女」を詠った歌が多数引用されます。しかし、これは単純な相聞ではなく、この人の「少女詠」には政治的側面があると解説にはあります。 塚本邦雄や岡井隆が先導した前衛短歌は、単なる短歌という一文芸ジャンルの革新運動では…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 3番目は「パラシュート」です。 ふくだみてパラシュート浮く春の昼馬魚様の人体さがる (河野裕子) パラシュートひらきし刹那わが顔のステンドグラス荒天に見ゆ (水原紫苑) これは、河野裕子の歌はそれほど難解ではないと思います。なんかほっとしました(笑)。春の昼に空を見上げると、パラシュートを開いて降りてくる人がいて、タツノオトシゴみたいに人の身体がぶら下がっていると。情景も目に浮かぶし、「ふくだみて」「馬魚様」っていう言葉の使い方も好きです。難癖をつけるとすれば、一体どこ…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 次のテーマは「額」です。人体の一部としての「ひたい」をテーマに詠まなくてはいけないという条件がついています。 富士額恥づるが如く学帽をふかくかむりて少年われは (小池光) ふるさとで泳いだようにいくたびもあなたの額髪を刈りたい (大滝和子) 小池光の歌には、青春の甘酸っぱさというかほんのりと感じる苦みの爽やかさを感じます。多分大人になれば「額を恥ずかしがる」なんてことはなくなるし、あっても意味合いが変わるでしょうが(禿げとかね…)、髪型や額の出方が気になって「学帽をふか…
『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。 yuifall.hatenablog.com 1日目の対戦はあらかじめ題と対戦相手が伝えられており、当日までに歌を準備してくるという方式で行われています。最初の題は「海」。 奪うため破壊するため(力あれ)海道をゆく倭寇のように (田中槐) 連綿と海老の種族を生みだしてわが惑星(プラネット)のくすくす笑ひ (井辻朱美) *(プラネット)はルビ これをどう読むか。作者はコメントしないのがルールで、つまり「正解」はないので、基本的には自チームを応援するということになります。自分だったらどうかなって考えました。 まず田中槐…