川内① 永禄十一年(1568)秋九月二十六日、朝。 源次郎の船で長良川を下る治重郎。 去年、稲葉山で意地を通した若い斉藤龍興に道を開け、川内に落ちるのを信長と見送った長良川は墨俣辺りで木曽川と合流し、川内に掛かる手前で再び分流する。船は木曽川の速い流れから穏やかな佐屋川に入った。 佐屋川に入り右手の立田輪中に沿って暫らく下る。 弾正忠家の交易の拠点でもある賑わう津島を左に見て立田輪中を右に回りこんでほどなく左に出てくる梶島の次の島がお小夜の在所のある森島で、右手に小木江城の櫓が見えたところで艫に立ち、艪捌きは源次郎も感心するほどだが人の世の捌きは後悔ばかりだなと自嘲した冶重郎は小木江砦を思い出…