林檎<3>-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 弥生小学校に在職当時さきに述べたように現実のその女性をまのあたりにして寄せた恋情にはもちろん深切なものがあったに違いないが、すでに妻子のある啄木にとっては所詮かなわぬ恋であったから、いわばプラトニックな思慕にすぎないものであり、片恋であったのではなかったかと思われる。それを三年の歳月を経て、東京で不如意で苦悩の多い生活の中で思いかえすと、そのおもかげが何倍かに拡大されて、その眼前にせまって来る思いがしたのに違いない。そのイメージはさらにイメージを生んでいってこうした浪漫的な歌をなさしめ…