『新版 相互扶助論』ピョートル・クロポトキン 私が若い頃に東シベリアと北満洲とを旅行した時に、ことさらに深い印象を受けた、動物生活の二つの方面があった。その一方面というのは、ほとんどあらゆる動物の種が、容赦のない「自然」に対して、きわめて峻酷な生存のための闘争をしなければならぬことであった。自然力のもたらす、定期的の、生命の大破壊がある。したがって私の観察し得たこの広大な地域においても、動物の数ははなはだ貧弱なものであった。さらに他の一方面というのは、まれに動物の数の豊富な土地があっても、大多数の進化論者が(もっともダーウィン自身は必ずしもそうではなかった)生存競争の主要特質であり進化の主要作…