ユクと初めて散歩したときに行ったお寺がある。そのお寺は近所で、今でもよく行く散歩コースでもある。 寺の門前に少し見上げる程度の階段があって、ユクと駆け上がり競争をすることになっている。なぜかユクは階段を見ると駆け上がりたがる。階段の上にでも暮らしていたのだろうか。 夕刻の散歩では、お寺の門はすでに閉まっていることが多い。閉じた門の前で、階段の一番上に腰掛けて、ユクとゆっくり暮れなずむ風景を眺めるのが好きだ。蚊のいる季節でなければ、そこは大変気持ち良い。高いところにいて、相手と距離があるからか、他の犬が通りかかっても、ユクは落ち着いている。なので、ゆっくりと一緒に座っていられる。 階段の下で、門…