誤読をされないように、本筋から逸れて議論がはじまらないように、丁寧に防御線を張っている学術系書物を読んでいると、「ご苦労様さまだなあ」と感心する。 言葉は数式などと違って、誤解の余地がありすぎる。 それでも、どこまでも言葉で肉薄するしかない学術系は、大変だ。 (不自由さを承知の上で、対象と切り結ぶ格好良さにしびれることも、いっぱいある。) その点、小説は一枚上手を行っている。 言わずに語る、という手法だ。 小説の場合、そのまま言葉にはしない。 むしろそのまま言ったら、失敗。 「いじめはいけない。なぜならば…」と正面から書くのではなく、作品を通して「いじめはいけないよね」と読者をしみじみ思わせた…