中島孤島訳『アラビヤンナイト』の愛読者として取り上げる2人目は、塚本邦雄氏である。1982(昭和57)年9月28日の朝日新聞夕刊にこんなコラムが載ったことがある。 ※塚本邦雄氏は1920(大正9)年生まれの歌人、詩人、評論家、小説家 ゛『アラビヤンナイト』(中島孤島訳・近代社) 昭和四年刊のこの六百ページ近いレザー装本には、三十葉の鮮麗なエッチングのさし絵が飾られている。十代前半の私の無二の座右の書であり、バイブルよりも聖なる本であった。その後に出たいかなる完全壮大な「千一夜物語」にも代えがたい魅力が、この一冊に満ちあふれていた。 『世界童話全集』なるシリーズ中のものであるにもかかわらず、発端…