午前十一時の時報と同時に、拙宅に北接する区立施設の屋上スピーカーから、大音声が鳴り響いた。長らく工事中でビル全体がテント地や黒い遮蔽幕で覆われたままだが、屋上のスピーカーだけは通常の機能を果そうとするらしい。音が割れて、ひどく耳触りの悪い音声だ。 揺れなかった。消防車や救急車のサイレンも耳に届かなかった。熱中症への注意喚起というほどの陽射しではない。となれば、謎の飛行物体の接近だろうか。警戒警報だろうか。階上の台所で作業中だったが、北側の窓辺へと急ぎ、窓を開けて聴き取ろうとした。アラーム機能のテストだという。なあんだ、演習か。 十時台のラジオでは、山口百恵特集を流していた。伍代夏子さんと男性ア…