新幹線のトンネルで思いついた話から、なかなか外に出ることができません。たとえばこんなことを考えます。宮沢賢治が「雨ニモマケズ」に書いた「デクノボウ」は常不軽菩薩を表していると言われます。しかしこの菩薩は、はたから見れば厄介者です。道ゆく人ごとに「わたしはあなたを敬って軽んじません、菩薩の修行を行なって、ついにはみ仏となられるからです」と語りかけるので、気味悪がられるのです。杖で叩かれ石を投げられても、遠くから「我なんじらを軽んじず」と唱え続けます。さて、これは美談として人々に感動を呼び起こす話ではありません。おそらく、近くにそのような人物がいれば、せいぜい「敬して遠ざける」のが良心的な対応でし…