雲井の雁はちょうど昼寝をしていた。 薄物の単衣を着て横たわっている姿からは暑い感じを受けなかった。 可憐《かれん》な小柄な姫君である。 薄物に透いて見える肌《はだ》の色がきれいであった。 美しい手つきをして扇を持ちながらその肱《ひじ》を枕にしていた。 横にたまった髪はそれほど長くも、多くもないが、 端のほうが感じよく美しく見えた。 女房たちも几帳の蔭《かげ》などにはいって昼寝をしている時であったから、 大臣の来たことをまだ姫君は知らない。 扇を父が鳴らす音に何げなく上を見上げた顔つきが可憐で、 頬《ほお》の赤くなっているのなども親の目には非常に美しいものに見られた。 「うたた寝はいけないことだ…