「いろいろ、ありがとう、そしてよろしく」。これは、私を研究の道へと誘った橋本先生から届いた最後のメールの末尾に付された一言である。2017年4月、橋本先生は亡くなった。がんだった。私が修士課程に入学して半年くらい経った2015年の秋頃から、抗がん剤治療のために入院していた。まだそれほど悪くない頃、私も見舞いに赴いたことがある。最近の研究状況などを報告する私の話を、抗がん剤の副作用のためか、額に汗をにじませながら静かに聞いてくれていた姿を覚えている。いま改めて振り返ってみると、私の大学院での日々は、この「よろしく」という言葉に応えるためにあったとさえ思う。 私が後に執筆することになる博士論文の副…