洲之内徹のエッセイ『続 海辺の墓』には、原民喜、というか「原民喜の死んだ日」について書かれたくだりがある。 正確な年月もおぼつかなくなるほど、原が亡くなってから随分と時が経った後に書かれたエッセイではあるが、その日のことは、洲之内の中にずっと記憶として残っていたようだ。 その日、雑誌「群像」の座談会が椿山荘であって、洲之内以外の出席者の中に、佐々木基一がいた。佐々木基一は、原民喜の妻の実弟。つまり、洲之内側の視点では、仕事とはいえ言葉を交わした人物の義兄が、その日の夜に衝撃的な死を遂げた、ということになる。 さらには、座談会の後、次の予定があると抜けた佐々木基一以外のメンバーと、銀座へ行き、何…